アジア版自由貿易協定「RCEP」の長所と短所
Asia Bets on Free Trade
RCEPはアメリカにとって何を意味する?
アジア太平洋圏でのアメリカの立場は、TPPがアメリカ抜きで批准された時点で既に打撃を受けている。そのためRCEP参加予定の16カ国が4日に何らかの予備協定に署名すれば、アメリカにとってはさらなる打撃になるとみられていた。
トランプ政権はアメリカと中国の経済を切り離し、製造業の多国籍企業を中国から撤退させようとしている。だがRCEPはアジア域内の経済統合を促進し、アジアを経済的にも戦略的にも今まで以上にアメリカから隔絶するものになりそうだ。
アメリカはトランプ政権になって以降、メキシコやカナダ、韓国、日本との間で、かなり縛りの緩い貿易協定で合意に達するのにさえ苦心している。こうしたなか、これらの国の多くが既にCPTPPへの参加を決めており、今後RCEPへの参加によってさらなる域内貿易のチャンスを手にする可能性がある。
これは、アメリカ製品にとって市場が減ることを意味する。さらに、強力なアジアのサプライチェーンが、これまで以上にアメリカの製造企業と張り合うことになる可能性を意味している。
しかも、RCEPには戦略的な側面もある。だからこそ、オバマ前米政権はTPPを支持していた。
RCEPが成立すれば、アメリカの緊密な同盟国である日本や韓国、オーストラリアはもちろんのこと、ベトナムやシンガポール、インドネシアなどと中国が自由貿易協定を結んだことと同義になる。
全米アジア研究所は報告書にこう記している。「こうした同盟諸国が中国と今まで以上に経済的な相互依存の関係を築けば、中国政府はこれらアメリカの同盟諸国に戦略的影響力を持つ」と。
<本誌2019年11月19日号掲載>
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