最新記事

アメリカ政治

トランプ弾劾はあり得なさそうで、実はあり得る

Getting to 67%

2019年11月27日(水)20時00分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

ルーニーは翌日、来年の選挙には立候補しないと発表した。この一件は、今の共和党が「もはや共和党ではなくトランプ党」であることを如実に示していると、政治学者のサバトは指摘する。

共和党議員のジレンマ

議会とホワイトハウスの複数の関係者によれば、マコネルは既に「何度か」、弾劾裁判のことで大統領と直接話している。彼は大統領の弾劾を難しくする今の仕組みに反対はしていない。

またマコネルは複数の事実についての解釈を基に、上院でトランプに有罪判決が下る可能性はほとんどないと考えており、それをトランプ本人にも伝えたという。

トランプは果たして有罪と判断されるだろうか。共和党の上院スタッフに尋ねると、「これ以上の新たな事実が出てこなければ、確実に無罪になる」というお決まりの答えが返ってきた。

彼らにとって重要なのは、最終的にウクライナはアメリカから軍事支援を受けたし、同国政府はバイデン親子の捜査に乗り出さなかったという事実だ。つまり、トランプが介入した疑惑があっても、結果はない。

「これが大統領の弾劾を正当化する重大な違反行為だとする主張はばかげている」というリンゼー・グラム上院議員の言葉が、今の共和党の考え方を象徴している。ただしトランプのことだから、これから何が出てくるかは「誰にも分からない」。この点は共和党の関係者(もちろん匿名を条件に)も認めている。

弾劾の行方は流動的だ。政治のプロの予測どおりに運ぶ保証はどこにもない。勝利に不可欠な激戦州でトランプの支持率が下がれば、たぶん共和党は浮き足立つ。

改選を控える共和党上院議員たちはホワイトハウスに出向き、大統領に辞職を迫るかもしれない。弾劾裁判の評決でどちらに投票したかの記録が残る事態は避けたいからだ。求心力の下がった大統領を担いだまま来年11月の選挙で上院の多数を維持することは難しいと考えるかもしれない。

ただし今のところ、トランプは共和党員の間で圧倒的な支持を得ている。だからトランプ降ろしは考えにくい。もしトランプを辞めさせれば、彼の支持者は怒り狂い、共和党の擁立した別の大統領候補には投票しないだろう。

そう考えれば、たとえ上院で弾劾裁判をやったとしても共和党からの造反は少数にとどまり、トランプは無傷で執務室に復帰する可能性が高い。1999年のビル・クリントンがそうだったように。

ただし一寸先は闇だ。トランプは2016年の選挙で政界の常識も予想も全て覆した。弾劾裁判でも同じことが起きる可能性はある。

<2019年12月3日号掲載>

【参考記事】弾劾で追い込まれたトランプが再選を投げ出す?
【参考記事】トランプは「無能=無罪」が共和党の言い訳(パックン)

20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン、インドの攻撃で約50人死亡と発表 40

ビジネス

再送日産、追加で1万1000人削減 従来の9000

ビジネス

ホンダの今期、営業利益5000億円に半減 米関税や

ビジネス

ゴールドマン、米景気後退確率35%に引き下げ 米中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 8
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 9
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中