トランプ弾劾はあり得なさそうで、実はあり得る
Getting to 67%
果たしてトランプは上院で裁かれるのか(写真は今年2月5日の上下両院合同議会で一般教書演説をするトランプ) AL DRAGO-BLOOMBERG/GETTY IMAGES
<上院の弾劾裁判で3分の2が賛成すれば有罪に――トランプは罷免への流れを切り抜けられるのか>
心配したくなる理由が、共和党多数の上院を率いるミッチ・マコネル上院院内総務にはある。だからドナルド・トランプ米大統領も心配したほうがいい。
このまま弾劾裁判まで進んだとして、トランプを有罪にするには上院議員の3分の2以上、つまり67人以上の賛成が必要だ。計算上、最低でも上院の共和党議員から20人の造反者が出なければならない。民主党のジョー・マンチン(ウェストバージニア州)とダグ・ジョーンズ(アラバマ州)が弾劾反対に回る可能性を考慮すれば22人だ。3分の2までの道は狭く、険しい。
それでもマコネルとホワイトハウスには不安がある。一握りの共和党議員が党の方針に反して公然と弾劾支持を表明した場合、党内で造反ドミノが起こる可能性だ。
そもそも党内には根っからの反トランプ派がいる。今年引退したジェフ・フレーク元上院議員はこの9月に、もしも無記名投票なら共和党から35人が弾劾に賛成すると発言した。そして大ベテランのミット・ロムニー(ユタ州)。かつてバラク・オバマと大統領の座を争って敗れた男だが、トランプとは犬猿の仲だ。
今回の弾劾調査のきっかけとなったウクライナ疑惑について、ロムニーは「ぞっとする」とコメントした。するとトランプは得意のツイッターで「尊大なばか者」と罵倒した。弾劾への賛否について、ロムニーは「白紙」としているが、トランプ陣営は初めからロムニーの票を計算に入れていない。
現状で気掛かりなのはスーザン・コリンズ(メーン州)とリサ・マーカウスキー(アラスカ州)だろう。共に女性で、マーカウスキーは2017年にオバマケア(医療保険制度改革)の一部を廃止する法案の採決で反対に回り、トランプのもくろみを頓挫させた。
コリンズは来年の選挙で再選を目指すが、接戦と伝えられる。トランプが民主党有力者ジョー・バイデン前副大統領の息子に関する調査を外国政府に依頼したのは「大きな間違い」だと批判し、下院の弾劾調査をトランプが「リンチ」と決め付けたツイートの撤回も求めている。
マコネルは、この2人の動きを警戒している。敵の多い大統領の世話役に徹するマコネルはトランプに、マーカウスキーに電話して、彼女が推進するエネルギー法案への協力を約束するよう進言した。またロムニーへの中傷をやめるよう忠告してもいる。