最新記事

アメリカ政治

トランプ弾劾はあり得なさそうで、実はあり得る

Getting to 67%

2019年11月27日(水)20時00分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

それでも共和党から造反議員が出るようなら、トランプはゾンビと化す恐れがある。「大統領選だけでなく、全般的に立場が弱まる」とマコネルに近い筋は言う。「いずれも退役軍人のアーンストとマクサリーが有罪票を投じたら一大事だ」

その他の共和党議員たちもあれこれ計算しているところだ。上下両院で多くがトランプに対して好悪相半ばする気持ちを(公の場で口にしないまでも)抱いている。大統領の粗野な態度、混乱を極めるホワイトハウス、シリアでのクルド人勢力への裏切り、ウクライナの大統領に政敵を調べさせようとした「狂気の沙汰」(ある古参議会スタッフの言)。こういうことの全てが伝統を重んじる党員たちのひんしゅくを買った。

イデオロギー的な問題もある。共和党議員の大半は自由貿易と小さな政府という伝統的な政策を信じている。2010年の中間選挙では草の根保守派連合のティーパーティーが138人の候補者を送り込んだ。無節操な歳出増に抗議するためだった。

トランプ時代に入って自由貿易は死に、歳出の話は誰もしない。共和党議員は「罠にかかった」ような気分で大統領を支持していると、共和党下院議員のジャスティン・アマッシュ(ミシガン州)は言う。ちなみに彼はこの夏、離党を表明している。

また別の共和党下院議員の非公式発言によると、まるで「ロボトミー手術を受けたかのように、本心を公言できない」人が少なからずいる。

理由は単純明快だ。政治家ゆえに彼らは世論の読み方を心得ている。最近は大統領退任を支持する人がわずかに過半数を上回る結果もいくつかある一方、共和党支持者では依然トランプ支持が盤石だ。

最近のFOXニュースによる世論調査では49%が大統領罷免を支持。ただし共和党支持者に限ると、その値は8%に下がり、87%がトランプ罷免を支持しない。この状況で公然と造反すれば、ただでは済まない。

いい例が、フロリダ州ネープルズ選出のフランシス・ルーニー下院議員だ。彼は10月にテレビ番組に出演したとき、ウクライナ疑惑をウォーターゲート事件になぞらえた。「当時は誰もが『調査は(リチャード・)ニクソンを狙った魔女狩り』だと言っていたが、そうではなかったことが判明した」と語り、今後の調査次第で自分も大統領の弾劾に賛成票を投じる可能性があると示唆した。

この発言にルーニーの地元選挙区民は猛反発(激怒したホワイトハウスも、それをあおった)。彼の事務所には有権者から「大統領を支持するつもりがないなら辞任しろ」との抗議が寄せられた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBの12月利下げ幅巡る議論待つべき=独連銀総裁

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中