韓国の「リトル東京」から日本人が消える?
単身赴任者の割合がさらに高まる可能性
日韓関係が悪化した李明博政権の頃から日本人のリトル東京離れがはじまった。家族を帯同しない駐在員が増えたのだ。北朝鮮がミサイルを発射すると単身で赴任する駐在員が急速に増加する。昨今の国交回復以降で最悪といわれる日韓関係やGSOMIA終了後の北朝鮮動向によって、単身赴任者の割合がさらに高まる可能性は否めない。
帯同した子をソウル日本人学校に通学させる方法は2つしかない。父母が直接送迎するか、リトル東京を発着するスクールバスを利用するかだ。通学を必要とする子を帯同していない駐在員の居住地は「リトル東京」に限らない。人件費の高騰もリトル東京離れに拍車をかけた。企業側も役員として赴任する駐在員の送迎をやめることが多くなり、事務所近くに居住する傾向が強まった。
さらに、子を帯同する駐在員もリトル東京を離れている。2010年10月、ソウル日本人学校は江南区開浦洞(ゲポドン)から麻浦区上岩洞に移転した。1980年に建設された校舎は老朽化が進み、日本人学校を運営するソウル・ジャパンクラブは、地価が高騰した江南区の敷地を売却し、その売却益でソウル市が外国人学校を誘致していた上岩洞に新築移転した。移転当時は土地開発がはじまったばかりだったが、生活施設が充実すると、学校に直接送迎できる上岩洞への居住者が増えはじめる。東部二村洞は高級住宅街と認識され、家賃は高額で物価も高い。東部二村洞と上岩洞の新築マンションの家賃は倍近い開きがあるのだ。
常時5万人から6万人の在韓日本人の3分の2が韓国居住者
市町村に相当する韓国の市郡区は226。外務省が公表する直近データで、日本人居住者がいない行政区は1郡のみである。赴任や留学などソウル生活をはじめたばかりの日本人は、日本人が多い地区を選択するが、在韓年数が長い人など日本人が少ない地区を選ぶ人もいる。
韓国での日系のビジネス界は、コミュニティが親密で顔見知りが多く、日本人が経営する日本料理店が社交場の様相を呈すことは珍しくない。出勤時にマンションのエレベータ等で毎日のように顔を合わせる人たちもいる。日本人居住者が100人近いマンションで暮らす女性駐在員は、同じマンションに日本人が多いのは安心だが、取引先が多く、近所の買い物や敷地内のゴミ捨てなど、部屋を出るたびに服装を整えて化粧をするのが大変と話す。
韓国の出入国記録によると常時5万人から6万人の日本人が韓国にいるという。その3分の2が韓国に居住する日本人である。日韓関係や北朝鮮の動向など、日本と韓国を取り巻く状況の変化が在韓日本人の居住環境に影響を及ぼしている。