韓国の「リトル東京」から日本人が消える?
韓国ソウルの「リトル東京」、東部二村洞から日本人が減少している...... 撮影:佐々木和義
<日韓関係や北朝鮮の動向など、日本と韓国を取り巻く状況の変化が在韓日本人の居住環境に影響を及ぼしている......>
韓国ソウルの「リトル東京」、龍山区東部二村洞(トンブイチョンドン)に居住する日本人の減少が止まらない。朝鮮日報が2019年11月に取材で訪れた東部二村洞の不動産会社社長は、体感で1〜2年の間にリトル東京に居住する日本人駐在員が30%〜40%減少したと回答した。
リトル東京と呼ばれるきっかけは1970年代に遡る
外務省が発表した「海外在留邦人数調査統計」令和元年版によると、韓国に在住する日本人は2018年10月1日時点で3万9403人。平成30年版のデータでソウル市に居住する日本人は1万2655人となっており、龍山(ヨンサン)区が最も多い2423人で、1179人の麻浦(マポ)区が続いている。
東部二村洞がリトル東京と呼ばれるようになったきっかけは1970年代に遡る。日韓の国交回復後、1970年代から日本企業の韓国進出がはじまった。国情が不安定な時代、日本大使館等が発信する無線とラジオは在韓日本人の生命線だった。
南山山頂から送信される電波を安定して受信できる地域への居住が求められたが、南麓の梨泰院は在韓米軍人等の歓楽街で、隣接する漢南洞は欧米人の居住地でもある。住宅地開発がはじまったばかりの東部二村洞が日本人居住区として選ばれた。
東部二村洞には「日本語可能」を掲げる不動産会社が軒を連ね、日本語に対応する医院や歯科、日本料理店などが集まっている。地域のスーパーは日本の食材を扱い、日本人主婦が買い物に訪れる。東部二村洞はまた、日本人学校に通学するスクールバスの唯一の発着地で、下校時間になると停留所近くの公園は日本語一色になる。
ソウルの市内バスは韓国語と英語のみだが、東部二村洞はすべての停留所で日本語のアナウンスがあり、韓国語ができない日本人が生活に不自由することはない。
東部二村洞に次いで日本人が多い麻浦孔徳(コンドク)は、日系企業が事務所を構える市庁周辺等への利便性が高い地域だ。2011年には空港鉄道の孔徳駅が開業し、金浦空港や仁川空港とも繋がったが、区内にある日本人学校に通学する方法はなく、単身赴任者など子を帯同しない駐在員が居住する。