米制裁で揺らぐイランの中東覇権──支配下のイラクやレバノンでも反イラン暴動
Trump Sanctions Weaken Tehran as Protests Escalate In Iran, Iraq, Lebanon
バグダッドで行われた反政府デモ(2019年11月14日) al-Marjani REUTERS
<アメリカの経済制裁で経済的苦境に陥ったイランばかりか、その影響下にあったイラク、レバノンでもイランへの憎悪の声が広がっている>
ドナルド・トランプのイラン制裁は効果をあげていると言っていいのか? 制裁によるイラン経済の疲弊は、国内外で混乱を生み出し、イラン政府を弱体化させている。
ロンドンに本拠を置く人権団体アムネスティは11月19日、イランの燃料価格引き上げに抗議するデモで、少なくとも106人がイランの精鋭「イスラム革命防衛隊」に殺害されたこと発表した。さらに情報が明らかになれば実際の死者数はさらに増え、死者は200人にのぼる可能性もあるという。
ガソリン価格を突如50%も上げたことに対する抗議デモは18日に始まったが、イラン政府はいまだに死傷者数を発表していない。
イラン国内の報道ではこのデモは、イランの核開発と親イラン武装勢力への支援を停止させたいアメリカの経済制裁に対する抗議、ということになっている。経済苦に怒った国民が、首都テヘランをはじめ主要都市で店を破壊し、車を燃やし、掠奪を行っているというのだ。
アムネスティが死傷者数を発表する前日、イスラム革命防衛隊はデモ隊に対し「断固たる行動」をとると警告。大規模な弾圧を行うことを匂わせていた。
一方、強硬派のカハン・デイリー紙は、19日に政府寄りの司法機関が、デモの指導者には絞首刑がふさわしいと言ったと報じた。
失敗の責任はイランに
イランの影響力が浸透しているイラクとレバノンでも、反政府抗議活動が広がっている。
イラクは過去6週間、暴力的な街頭デモと銃撃で混乱のきわみにある。アデル・アブドルマフディ政権の腐敗と縁故主義、公共サービスの不備に憤慨する暴徒は、首相の追放を要求している。
だがデモ参加者の怒りの矛先は隣国のイランだ。デモ隊はイランを、マフディ政府を背後で操る黒幕とみなし、政府の失敗の最終的な責任はイランにあると考えている。
「出ていけ、出ていけ、イラン!」と唱和しつつ、デモ隊は聖なるシーア派の都市カルバラにあるイラン領事館に放火し、イランの旗を燃やした。
そんなデモ隊に反撃したのは、イランが武器と訓練と資金を提供するイラクの民兵集団だ。これこそがイラクにおけるイランの影響力を明確に表す証拠だ。民兵集団はデモ隊に発砲し、これまでに300人以上が死亡、約1万5000人が負傷した。
ニューヨーク・タイムズと米ニュースサイト「ザ・インターセプト」が入手した機密文書は、イランがイラク情勢に深く介入していたことを証明している。
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<参考記事>米イラン戦争が現実になる日