香港の完全支配を目指す中国を、破滅的な展開が待っている
CHINA’S RISKY ENDGAME IN HONG KONG
中国包囲網に先進諸国が加担
既に米下院は、香港が一国二制度に基づく高度な自治を維持しているかどうかを国務省に毎年検証するよう義務付ける「香港人権・民主主義法案」を可決した。アメリカは一国二制度を前提に、関税などで中国本土より香港を優遇しているためだ。中国政府が香港の権利を踏みにじれば、ドナルド・トランプ米大統領の中国封じ込めに加担することに躊躇していた先進諸国も、包括的な経済制裁に加わる可能性が高い。
これが中国政府にとって破滅的な展開になることは明らかだ。共産党独裁の正統性は、継続的な経済成長と生活水準の向上に懸かっている。しかし指導層への異議申し立てを許さない国では、誤った政策立案を防止する仕組みはほとんど存在しない。
習は2年前、建国100周年を迎える2049年には、中国を経済的に進んだ「社会主義の現代化強国」にすると宣言した。4中全会の決定でも、この目標が繰り返された。
だが中国が香港に対する約束を破った場合には、はかない夢に終わりそうだ。
ミンシン・ペイ
MINXIN PEI
上海生まれ。上海外国語大学を卒業後、米ハーバード大学で博士号取得。クレアモントマッケンナ大学ケック国際戦略研究所所長。中国の政治体制に対する「懐疑派」の代表格として知られる。
©Project Syndicate
<2019年11月26日号掲載>
11月26日号(11月19日発売)は「プラスチック・クライシス」特集。プラスチックごみは海に流出し、魚や海鳥を傷つけ、最後に人類自身と経済を蝕む。「冤罪説」を唱えるプラ業界、先進諸国のごみを拒否する東南アジア......。今すぐ私たちがすべきこととは。