女性の着替えやトイレを監視──入管が組織的セクハラ
フィリピン人女性Eさんは、日本人男性と結婚しており、二人の息子もいるにもかかわらず、もう3年近くも収容されているという。それは、彼女が以前交際していた日本人男性(現在の夫とは別人)に騙され、その男性の犯した犯罪に利用されたことで、彼女自身も有罪判決を受けたことが原因と考えられるが、既に刑法による処罰を受けたEさんを、さらに入管が収容し続けていることは、現在の刑法では認められていない予防拘禁*にあたる疑いがある。終わりのない収容に耐えかね、Eさんはハンガーストライキを行ったものの、独房に移される。そこでは、着替えもトイレも全て監視カメラに映ってしまうため、Eさんは「非常に強いストレスを感じています」と言う。
「以前は、自分からハンガーストライキをしていましたが、今はストレスのために食べ物が喉を通りません」(Eさん)。
つまり、女性としての尊厳を踏み躙る入管の暴挙が、Eさんを摂食障害に陥らせている疑いがあるのだ。筆者取材の時点では、懲罰房のトイレに高さ150センチ程の仕切りが設置されたものの、「監視カメラは天井に取り付けられているので、結局、全部映ってしまう」とEさんは言う。
*法で定められた刑期を終えても、「再犯抑止」等を口実に、引き続き身柄を拘し続けること。戦中の治安維持法で、思想犯に適用された。
東京入管前で抗議する市民団体SYIメンバー達 筆者撮影
もう一人の女性、Dさんはトルコ籍のクルド人難民。トルコでは少数民族クルド人への様々な抑圧があり、トルコ治安当局や一般人による暴力や殺害等が横行している。そのため、Dさんは一年程前に庇護を求めて来日したが、入管施設に収容されてしまった。DさんはEさんと同時期にハンガーストライキを行ったものの、やはり懲罰房に入れられてしまう。着替えやトイレを監視される屈辱に、Dさんは「男性職員も見ているんでしょう?」と泣き叫んで抗議したが、入管職員たちは「仕方がない」と言うだけだった。
「私はイスラム教徒です。この様な辱めを受けることは、とても耐えられません。私の宗教や文化からは絶対あり得ない......」
そう、Dさんは筆者に訴えた。
残り一人のスリランカ人女性には筆者は取材できていないものの、入管問題に取り組む市民団体「収容者友人有志一同」(SYI)メンバーの織田朝日さんによれば、毎日、口癖のように「殺してほしい」と訴え、今年9月には置いてあったポットのコードで自殺を試みたという。入管職員の制止で命を落とすことはなかったものの、精神的にかなり追い詰められている状況だと言えよう(関連情報)。
これらの状況は既に述べたように今年10月での取材時点のものであり、現状はまた変わっているかも知れないが、いずれにせよ、深刻な女性達への人権侵害が行われていたことには変わりはない。