最新記事

アメリカ外交

米軍シリア撤収で注目される民主有力候補の外交アドバイザー

2019年11月6日(水)18時00分

勉強熱心なウォーレン氏

ウォーレン氏は、ハーバード大教授時代に破産法などに関する研究で名声を高め、来年の大統領選に向けても内政問題に重点を置いている。

しかし今回の出馬前には外交政策の知識強化にも努め、オバマ政権の国防長官だったアシュトン・カーター氏の側近だったサーシャ・ベーカー氏を17年に陣営に迎えた。

ウォーレン氏は同年、上院軍事委員会に籍を置き、イラクやアフガニスタン、中国など諸外国を歴訪。陣営の広報担当者によると、この間にウォーレン氏は外交政策の「包括的なビジョン」を確立し、それは現在提唱している国務省の刷新計画や通商政策などに反映されていると説明した。

ウォーレン氏は、12年の上院選で協力を仰いだバンダービルト大のガネシュ・シタラマン教授(法学)ら専門家の意見にも耳を傾けている。

シタラマン氏は、軍事力よりも外交努力を優先する進歩的な政策の提唱者だが、ロシアや中国といった独裁的ナショナリスト国家と手を握る危険もよくわきまえている。

トランプ氏が掲げる「米国第一」とウォーレン氏の立ち位置は似ているようにも見える。ただ陣営は、トランプ氏の単独行動主義と対照的に、ウォーレン氏はシリアなどで多国間主義を打ち出すと強調した。

「反体制的」なサンダース氏

サンダース上院議員の中心的な外交アドバイザーは、17年初めから同氏の事務方として働くマット・ダス氏で、ワシントンで主流の外交政策に対する批判的な姿勢で知られる。

ダス氏は中東専門家で、リベラル系シンクタンクのアメリカ進歩センター出身。サウジアラビアによるイエメンへの軍事介入に米国が関与するのを止めることを求める上院の決議案提出に、主導的な役割を果たした。

決議案は4月、異例の超党派の賛成を得て可決されたが、トランプ氏が署名を拒んでいる。

ダス氏は、この超党派決議について、議会が大統領の軍事力行使を抑える1つのモデルとなるものであり、軍事介入の見直しに国民の支持があることを示していると強調。「国民は、米国が世界から手を引くべきだと考えている訳ではないが、世界で実際にどう関わり合っていくか、真剣な議論を望んでいる」と訴えた。

ダス氏をはじめ、サンダース氏が助言を受けている人々は、サウジアラビアやイスラエルなど人権侵害の面で国際社会から批判されている国に米国が無条件で支援を与えることにも懐疑的だ。

頭脳集団を集めたブティジェッジ氏

インディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏は、海軍士官としてアフガニスタンに従軍した経験を討論会で取り上げるなど、大統領選で外交政策を前面に押し出している。

外交チームをけん引するのは、オバマ政権で国防次官補だったダグ・ウィルソン氏だ。ウィルソン氏もブティジェッジ氏と同じくゲイで、同性愛者であることを公言することを禁止した「聞くな言うな」の米軍規定を2010年に撤回させることに尽力した。また政治メディアのポリティコによると、ブティジェッジ氏は世界中から無償で助言をしてくれる専門家を100人超抱えている。

[ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191112issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月12日号(11月6日発売)は「危ないIoT」特集。おもちゃがハッキングされる!? 室温調整器が盗聴される!? 自動車が暴走する!? ネットにつなげて外から操作できる便利なスマート家電。そのセキュリティーはここまで脆弱だった。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中