最新記事

北朝鮮

金正恩、核の進化に自信深め強気に転換 米国でのトランプ弾劾も後押しか

2019年11月4日(月)11時55分

制裁をうまく逃れ、中国から命綱を提供され、トランプ米大統領が国内で弾劾問題に直面していることが、非核化交渉で北朝鮮を強気にさせていると、専門家や当局者は指摘する。写真はミサイル実験のニュースを見るソウルの人たち(2019年 ロイター/Heo Ran)

制裁をうまく逃れ、中国から命綱を提供され、トランプ米大統領が国内で弾劾問題に直面していることが、非核化交渉で北朝鮮を強気にさせていると、専門家や当局者は指摘する。

トランプ大統領も北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長も、3度の直接会談で築いたとする良好な個人的関係を強調し続けている。しかし、北朝鮮は先ごろ、忍耐が切れつつあるとし、年末までに交渉姿勢を変えるよう米国に迫った。

北朝鮮は10月31日の2発を含め、ミサイルを相次ぎ発射することで、どこまでが約束違反になるのか試している。武器の使用規制を具体的に定めていないことが、北朝鮮に核兵器開発の継続を許していると、専門家は警鐘をを鳴らす。

ミサイルの試射には、北朝鮮軍にとって兵器を進化させられる実用的なメリットがある。その一方で、柔軟性がなく敵対的な態度の米国を前に、北朝鮮はどんどん好戦的に傾いていると強調することができる。

31日の発射は12月末の期限に向けて米国を急かすためのものだったと、ソウルにあるジョージ・メイソン大学コリアの客員研究員アンドレイ・アブラハミアン氏は言う。

「しかし、必要に迫られればディールなしでも問題ないと平壌は結論づけているのではないか」と、アブラハミアン氏は話す。「残念なのは、今の流れではそうなりそうなことだ。今後長い間、すべての利害関係国にとって状況は悪くなる」

先行きは明るくない

韓国駐在のある外交官は、トランプ氏の再選に向けた選挙戦と弾劾をめぐる問題が、金委員長に計算違いをさせているのかもしれないと話す。

「自分はトランプ大統領再選を後押することも、駄目にすることもできると真剣に思い込んでいる節がある。しかし絶対的なリーダーに対し、平壌では間違っている、死にたくないでしょうとは誰も進言できない」と、この外交官は言う。

「金委員長にとってはトランプ氏がすべてだ。非核化するには、大統領が再選されるという確信が必要だ」

一方、米国側は10月5日にスウェーデンのストックホルムで開いた実務者協議に、完全かつ不可逆的な非核化が必要という態度で臨んだ。そして、その第一歩として兵器の試験の休止を迫ったと、この外交官は明らかにした。

米国が石炭と繊維製品の輸出禁止を一時的に緩和することを提案したとの一部報道があったが、この外交官によると、ストックホルムの協議ではそうした詳細は話していないという。

「米国は、先に制裁を緩和するというリスクは犯せない。非核化の具体的な進展がないにもかかわらず、首脳会談の開催を含めて金委員長にはすでにたくさんの贈り物をしている」と、同氏は話す。

「北朝鮮に圧力をかけられる手段は基本的に制裁だけだ」

米国の交渉団が再協議を設定しようとしたところ、北朝鮮側は非協力的だったという。「見通しは明るくない」と、この外交官は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米景気後退の確率45%近辺、FRBへの圧力で長期影

ワールド

米国のウィットコフ特使、週内にモスクワ訪問=ロシア

ワールド

米・イスラエル首脳が電話会談、トランプ氏「あらゆる

ビジネス

米国株式市場・午前=大幅反発、前日の急落から地合い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「利下げ」は悪手で逆効果
  • 4
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 5
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 7
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中