インドネシア、巨大ヘビから妻救出した夫、ブタ丸呑みで立ち往生のヘビ救った男たち
人間も丸呑みするヘビの恐ろしさ
今回のヘビの「被害者」は野生ブタであり、巻き付かれた女性も夫の勇気ある行動で解放されたが、インドネシアではこれまで人間がヘビに丸呑みされて死亡したり、襲われるなどして重傷を負う事案が毎年のように発生している。
2018年6月15日には前日から行方不明となっていたスラウェシ島東南スラウェシ州の54歳の女性が付近にいた異様にお腹の膨れたニシキヘビ(全長7メートル)を殺して腹部を割いたところ、中から遺体となって発見されたことがある。
さらに2017年3月24日には同じスラウェシ島で行方不明となっていた25歳の男性が近くにいた約7メートルのヘビの体内から遺体で発見されている。
同年9月にはスマトラ島リアウ州で男性が全長7〜8メートルの巨大なアメニシキヘビに左腕を噛まれて切断寸前になる事故も起きている。この男性はヘビが好物で食用にするために捕獲しようとして噛まれたという(「全長7mの巨大ヘビが女性を丸呑み インドネシア、被害続発する事情とは」)。もっとも、インドネシアではヘビが人間を丸呑みすることは稀で、捕獲を試みるとか、誤って踏みつけでもしない限り襲ってこないといわれている。
インドネシアでヘビは「悪魔の化身」
インドネシアの人口の88%を占めるイスラム教徒にとってヘビは「悪魔の化身」として嫌われているが、男性の中には強壮剤、健康食品などとして食用にするケースも多く、首都ジャカルタの北部中華街には夜ともなると生きたままのコブラはじめ各種ヘビを食用に提供するヘビ屋台が複数軒を連ねる。
生き血はそのまま薬味と混ぜて飲み、引き裂いて細かく切り刻んだ肉は串刺しにして「焼き鳥」ならぬ「焼き蛇」として食べる。味は焼き鳥と大差なく、ヘビと知らなければ結構美味で堪能できる。
こうした食用として捕獲を試みる人がいる一方で、原野や森林の乱開発が原因でヘビ生息地の自然環境が破壊され、エサとしてサルや野犬、イノシシなどが集まる農園に出没するケースが増えており、それだけ人間と遭遇することも多くなっていると警察などでは注意を呼びかけている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など