EU離脱「再々延期」で混迷イギリスは総選挙へ
議会前でジョンソン批判のポスターを掲げる離脱反対派(10月30日) YARA NARDI-REUTERS
<またも延期のEU離脱、12月12日に行われることになった総選挙の争点と各党の動向は?>
3月29日、4月12日、そして10月31日――ブレグジット(イギリスのEU離脱)が実現しないまま、またも期限が過ぎ去った。EUは10月28日、離脱の3カ月延長を求めるイギリスの要請に同意。これで次の期限は1月31日ということになる。
フランスのマクロン大統領はもっと短い延長を主張したが、イギリスには現在の膠着状態を打開する総選挙を実施するための時間が必要だという点でEU各国の意見は一致した。
これまでと同様、今回の延期も「フレクステンション(柔軟な延期)」であり、議会が新しい離脱合意を承認すれば、イギリスは1月31日より前に離脱できる。だが、それは希望的観測のようだ。
そもそも1月31日に間違いなく離脱できるのか。イギリスのジョンソン首相はEUに対し、「1月31日以降のさらなる延期は不可能」だという点を明確にするよう希望した。だがEUのトゥスク大統領は、今回の延期が「最後のものになるかもしれない」と言っただけだった。
ジョンソンは9月初旬から総選挙を呼び掛けてきた。そのためには下院の3分の2の賛成が必要だったが、野党・労働党は10月31日の「合意なき離脱」の可能性が消滅するまで、選挙の実施を拒否し続けた。
EUが期限延長を認めると、労働党のジェレミー・コービン党首もようやく総選挙の実施に応じる姿勢を示した。その後に小さなゴタゴタはあったが、最終的に投票日はクリスマス直前の12月12日に決まった。
混乱は選挙後も続く?
それに合わせて現在の議会は11月6日に解散する運びとなった。1948年以降で、最も短い会期だ(「静粛に!」の連発で話題になったジョン・バーコウ下院議長は10月31日で退任)。離脱合意案をめぐる論戦は選挙後まで棚上げになるので、実際の離脱に向けた動きはしばらく凍結される。
総選挙の争点はブレグジットだけではない。コービンは選挙戦の開始に当たり、「脱税者、ペテン地主、悪徳経営者、大環境汚染者」と闘うと宣言したが、最も重要な争点はやはりブレグジットだ。
与党・保守党はジョンソンの離脱案を有権者に問い、可能な限り早期の離脱実現を訴えるだろう。コービンはEUとの関税同盟を含む「もっとソフトな」ブレグジットと、再度の国民投票実施を目指すと約束した。