中小企業の「2025年問題」──根深い事業承継問題
後継者が見つからなければ事業も技術も雇用も途絶える YOSHIE HASEGAWA-iStock
<日本企業の約99%を占める中小企業の後継者問題は産業・経済の未来に直結する。経営者の高齢化、親族外承継など一筋縄では行かない事業承継の展望は>
中小企業の事業承継問題が話題になる機会が増えている。経営者が高齢化していく中、後継者が見つからない中小企業も多い。2017年秋に経済産業省と中小企業庁が出した試算1によれば、「現状を放置すると、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる」可能性があるという。あわせて、休廃業・解散企業の約5割が黒字であることにも触れ、地方経済の再生・持続的発展には事業承継問題の解消が必要であると言及している。上記は一定の仮定2を置いた試算ではあるが、2025年まで残された時間は少なくなる中、政府も中小企業の事業承継対策に取組んでいる状況だ。
中小企業の事業承継を取り巻く現状
中小企業は、企業数では日本企業の約99%を占め(図表2)、従業員数では約70%を占める(図表3)。経済や社会の基盤を支え、雇用の受け皿として機能としていると言えよう。中小企業の経営は、経営者自身の手腕・信用によるところも大きい。しかしながら、その経営者の高齢化が進んでいる。年代別に見た経営者の年齢分布を見てみると、1995年から2015年にかけて高齢の経営者の割合が増加する。経営者年齢のボリュームゾーンは、40代後半から60代半ばへと移動した(図表4)。あと数年で、そのボリュームゾーンが70代に突入する。まだまだ元気で活力ある経営者も多いのだろうが、そのボリュームゾーンにいる多くの経営者が引退を考える時期がもうすぐやってくるのだ。
しかしながら、まだ後継者を決められていない経営者が多い。東京商工会議所のアンケート調査によれば、「既に後継者を決めている」経営者は、60代で約3割、70代でも約5割に留まる(図表5)。
また、同アンケートで「後継者は決めていないが、事業は継続したい」と回答した経営者の多くが後継者探索・確保を障害・課題と感じている。しかしながら、そう感じていてもその準備・対策に取組む経営者は少ない(図表6)。日々の経営で精一杯、または何から始めたら良いのか分からないといったことも背景にあるのだろう。後継者を決定して終わりではなく、後継者の育成、承継準備にも時間がかかることを考えると、承継のハードルは年々上がっていくことになる。
――――――――――
1 2017年10月12日 未来投資会議構造改革徹底推進会合(第1回、平成29年10月12日) 資料http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/chusho/dai1/siryou1.pdf
2 2025年までに経営者が70歳を越える法人の31%、個人事業者の65%が廃業すると仮定。雇用者は2009年から2014年までの間に廃業した中小企業で雇用されていた従業員数の平均値(5.13人)、付加価値は2011年度における法人・個人事業主1者あたりの付加価値をそれぞれ使用(法人:6,065万円、個人:526万円)。