スリランカで準独裁体制が復活すれば、海洋覇権を狙う中国を利するだけ
GOOD NEWS FOR CHINA?
ゴタバヤ陣営は、中国との「関係回復」も明言している。世界で最も混雑したシーレーンに隣接するスリランカの戦略的位置を考えると、その影響は国内にとどまらない。実際、スリランカは中国とインド太平洋地域の民主主義陣営(インド、アメリカ、日本、オーストラリア)との海洋覇権をめぐる争いで決定的に重要な役割を果たす可能性がある。
中国の「真珠の首飾り」戦略は、インド洋の主要航路沿いに軍事・商業上の重要拠点を確保することで、インドを包囲するというものだ。習近平(シー・チンピン)国家主席は、ハンバントタ港を「21世紀の海のシルクロード」構想の要と呼んでいる。
習の「一帯一路」戦略に対する国際的な懸念が強まっている今、ラジャパクサ一族の政権復帰はスリランカを軍事的な前哨基地にしたい中国にとって歓迎すべきニュースだ。しかし、それ以外のほとんど全員にとっては悪いニュースだ。
「ゴタバヤ大統領」は兄の政権の犠牲者に対する法的救済を阻止し、民族・宗教間の分断を広げ、インド太平洋における中国の覇権を後押しするだろう。スリランカの民主主義はかつてなく脆弱に見える。
<本誌2019年11月5日号掲載>
【参考記事】謎多きスリランカ同時多発テロ──疑問だらけの事件を振り返る
【参考記事】スリランカは「右傾化する世界の縮図」―ヘイトスピーチ規制の遅れが招いた非常事態宣言
10月29日発売号は「山本太郎現象」特集。ポピュリズムの具現者か民主主義の救世主か。森達也(作家、映画監督)が執筆、独占インタビューも加え、日本政界を席巻する異端児の真相に迫ります。新連載も続々スタート!
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら