アメリカは好況? 不況? 支持政党で景況感に大きな差
強まる政治的性向
このような調査は各項目の間に因果関係を打ち立てるものではなく、例えば情報を手に入れているメディアが景気認識を左右するのか、政治的なスタンスが視聴するメディアを決めるのかは不明だ。しかしこうした各要因の関係の解きほぐしに着手する基礎となる。
とりわけトランプ氏は経済を巡る政治的に影響された見方によって政局を大きく変えてしまったとみられているだけに、こうした因果関係の分析は重要だろう。
ミシガン指数も1980年にレーガン氏、2008年にオバマ氏、16年にトランプ氏がそれぞれ勝利した3回の大統領選の投開票前後に所属政党に関する調査を実施した。いずれの調査でも所属政党により景気認識に大きな差があり、選挙で勝った政党に所属していると景況感が良く、負けた政党に所属していると景況感が低かった。
ミシガン大調査のディレクターのリチャード・カーティン氏によると、レーガン氏とオバマ氏の場合はこの差が統計的に取るに足りない範囲にとどまったが、トランプ氏では民主党所属と共和党所属の間で極めて大きな74.6ポイントの開きが出た。
カーティン氏は10月初旬のリポートで、トランプ氏が大統領に就任した後も共和党員は成長に楽観的で民主党員は景気後退を見込んでいる状況が続いていると指摘。従来は消費者景況感が良好だったり改善したりすれば現職に有利に働き、景況感の低迷は挑戦者に追い風となっていたが、「最近は政治的性向が強まり、関連性が失われるかもしれない」という。
FRBも苦境に
政治的性向と景況感の関連性の変化や政治的性向の実体経済への影響を心配しなければならないのは政治アナリストだけではない。
消費者の景況感や景気見通しに関する調査は経済予測に使われ、特に米連邦準備理事会(FRB)は消費行動やインフレ動向、消費者景況感の将来の動きなどを見極める際に消費者景況感調査に頼っている。
景気に関する見解が実際の経済の動きではなく政治的な信条で決まるのであれば、こうした項目について分析する上で問題になる。
モーニング・コンサルタントのリア氏は、景況感が良好であれば消費者は将来の見通しが明るいかのように消費を続けることがあり得るとみている。消費者は理由如何に因らず「楽観的に感じれば景気を支え続ける」という。
一方、消費者景況感と実際の消費の関係は乏しいとの調査結果もある。プリンストン大のアティフ・ミアン氏とシカゴ大のアミール・サフィ氏は2017年の研究で、2016年11月の大統領選ではトランプ氏支持層で景気認識が大幅に改善したが、選挙後にこの層で実際に支出が大きく増える状況は確認できなかったと分析した。
(Howard Schneider記者)
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