チリ暴動が照らし出す、反緊縮デモが世界各地に広がる理由
抗議運動は物価上昇が引き金になることが多いが、火に油を注ぐのが経済的不平等や汚職への怒りだ。ハイチやイラクでは最近、特定の契機もないまま、経済状態と汚職に抗議する反政府デモが起きた。国際団体トランスペアレンシー・インターナショナルの昨年の腐敗認識指数(CPI)によれば、世界各地で一般市民は汚職が横行しているとの認識を強めている。
うまくいけば、いま起きている抗議運動は一部の国で、必要不可欠な改革をもたらす力になるだろう。だが悪いニュースが1つ。私たちは今、世界経済の新たな減速のとば口に立ったにすぎないかもしれないのだ。
景気後退の懸念が正しいなら、政治改革どころか、さらなる緊縮が進むことになりかねない。その結果として市民が抱く怒りは、ポピュリズムや外国人嫌悪、独裁主義的な政治運動に簡単に結び付く恐れがある。この数カ月、各地で相次ぐ騒乱は単なる始まり、なのだろうか。
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<2019年11月5日号掲載>
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