酷暑が深刻なカタール 屋外にエアコン、青い道路、対策進むが......
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ハリーファ国際スタジアムのエアコンダクト Kirby Lee-USA TODAY Sports Reuters
<酷暑が問題となっているカタールでは、屋外競技場やショッピングモール、市場といった屋外の公共スペースにエアコンを導入する動きが広がっている......>
中東カタールは酷暑が深刻だ。夏には夜間でも気温が32度を下回らず、昼間は48度を超えることもある。そこで近年、酷暑対策として、屋外競技場やショッピングモール、市場といった屋外の公共スペースにエアコンを導入する動きが広がっている。
サッカースタジアムのピッチに冷気を送り込む......
2022年にカタールで開催される「2022 FIFAワールドカップ」の会場として新たに建設された「アル・ワクラ・スタジアム」もそのひとつだ。観客席下から足首の高さに冷気を出して観客が涼をとれるようにし、「下にたまりやすい」という冷気の性質を活用して、この冷たい気流を観客席から芝生のピッチエリアに流れ込ませる。
また、フィールドには、サッカーボール大の通気孔が設けられ、冷気をさらに送り込む仕組みだ。カタール大学サウド・ガニ准教授は「観客や選手のみに冷気を届ける」という発想からこのシステムを考案したという。
また、首都ドーハには、青い反射塗料を塗った道路も登場している。
地面の通気口から冷気を吹き出すショッピングモール、カターラ・カルチュラル・ヴィレッジ。
「エアコンを切ってしまったら、体がうまく動かなくなる」
環境保護主義者でもあるカタールの湾岸研究開発機構(GORD)のユスフ・アルホー会長は、米紙ワシントンポストの取材で、「エアコンを切ってしまったら、とても耐えられない。体がうまく動かなくなる」とコメントし、このようなカタールの酷暑対策に一定の理解を示している。
もちろん酷暑環境による健康被害を防止するうえでエアコンは有効だが、地球温暖化防止とのジレンマは避けられない。カタールでは、エアコンの稼働に必要な電力を化石燃料で発電しているからだ。これにより二酸化炭素が生成され、地球温暖化につながるおそれがある。
カタールも締約国となっているパリ協定では「産業革命前からの地球の平均気温の上昇を2度未満に抑える」ことが定められている。
北極圏を除き、世界で最も急速に温暖化が進んでいる地域
しかし、カタールでは、地球規模での気候変動に加え、ドーハ周辺の建設ラッシュにより、過去30年間で、気温上昇が急速にすすみ、すでに気温が2度以上上昇している。2010年7月の熱波では歴代最高気温50.4度を記録した。
米カリフォルニア州の非営利団体「バークレー・アース」のジーク・ハウスファーザー氏は、米紙ワシントンポストの取材で「カタールは、北極圏を除き、世界で最も急速に温暖化が進んでいる地域だ。カタールの気温上昇は、温室効果ガスの排出量削減に取り組まなければ世界がどのようになってしまうのかを、私たちに示しているようにもみえる」と語っている。