最新記事

中国

中国の探査機が月に持ち込んだ植物の種、ハエの卵......で起きていたこと

2019年10月16日(水)18時30分
松岡由希子

ミニ生態系が積み込まれていた Chongqing University

<今年1月、月の裏側での月面着陸に世界で初めて成功した中国の無人探査機「嫦娥4号」には、ミニ生態系が積み込まれていた......>

中国の無人探査機「嫦娥4号」は、2019年1月3日、東経177.6度、南緯45.5度の月の裏側での月面着陸に世界で初めて成功した。「嫦娥4号」には、直径16センチ、長さ18センチの円筒に、綿花の種、ジャガイモの種、菜種とミバエの卵、酵母菌、シロイヌナズナという6種類の生命体を入れた重さ2.6キロのミニ生態系「ルナー・マイクロ・エコシステム」も積み込まれていた。

change_plant_container.jpgChongqing University

唯一、綿花が発芽したが、気温低下で枯れた

月の裏側に着陸した「ルナー・マイクロ・エコシステム」内の生命体で唯一、発芽に至ったのが、綿花だ。1月15日に発芽が確認されたが、翌日、摂氏マイナス19度に気温が低下したため、枯れてしまった。当初、発芽した綿花の葉は1枚だけだとみられていたが、その後、データ検証や画像解析により、葉は2枚であったことがわかっている。

一連の実験を主導した重慶大学の謝更新教授によると、研究プロジェクトでは、当初、カメを「嫦娥4号」に"搭乗"させようとしたが、「嫦娥4号」では実験用積載物の重さを3キログラムまでに制限していたため断念したという。

カメが宇宙空間を訪れた例はすでにある。1968年にソビエト連邦によって打ち上げられ、月に接近した無人の宇宙船「ゾンド5」には、ミバエや植物とともに、2匹のリクガメが搭載されていた。リクガメはその後、無事に地球に帰還している。

次のミッションでは、より多くの生命体を月に送り込む

謝更新教授らの研究チームは、次の月探査ミッションで、より多くの生命体を月に送り込むことを計画している。より大きな積載物を搭載できれば、より複雑な生命体を送り込むことができるだろう。中国国家航天局(CNSA)では、2019年4月、2020年に予定している「嫦娥6号」の月南極でのサンプルリターン(月で試料を採取し、地球に持ち帰る)において、中国内外の大学や研究機関、民間企業から20キログラムまでの積載物を受け入れることを明らかにしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中