最新記事

香港デモ

香港行政長官「緊急条例、覆面禁止法以外の適用は計画せず」

2019年10月8日(火)16時00分

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(写真)は会見し、緊急時に行政長官が公共の利益のために必要な規制を制定できる「緊急状況規則条例(緊急条例)」を利用して、他の法律を導入する計画はないと述べた。香港で撮影(2019年 ロイター/Tyrone Siu)

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は8日会見し、緊急時に行政長官が公共の利益のために必要な規制を制定できる「緊急状況規則条例(緊急条例)」を利用して、他の法律を導入する計画はないと述べた。

長官は4日、緊急条例を約50年ぶりに発動して覆面の着用を禁じる法律を制定。覆面禁止法は5日に施行されたが、これを受けて抗議デモが激化している。

長官は会見で、香港には自力で現状に対処する手段があると述べた。

長官はまた、観光客の数が急減したとし、第3・四半期の香港の経済指標へのデモの影響は「非常に深刻であることは確実だ」と指摘。

「国慶節の休暇期間に当たる10月1─6日の香港への訪問者数は、50%以上減少した」と述べた。特に小売り、ケータリング、観光業、ホテルへの影響が大きいとしている。

長官は、国慶節関連の行事に出席するために先週、中国本土を訪問した。ただ、中央政府の高官と、職務に関して協議するために接触することはなかったという。

長官は会見で、どのような状況になればデモ鎮静化のために本土政府の支援を求めるのか、と質問されると、香港は自力で解決策を見つけ危機に対応することが可能だと強調。

「中央政府への支援要請など、特別な措置を取ることになる状況については、はっきりとしたことは今は言えない」と述べた。

覆面禁止法の効果については、判断は時期尚早としたほか、政治活動に参加しないよう若者らに呼び掛けた。

3連休明けの8日、商業活動は再開したものの、地下鉄の運行は一部しか再開されていない。当局はインフラ破壊により通勤・通学に支障が出る可能性を警告した。

香港地下鉄は8日、一部の駅を損傷修理のため閉鎖すると発表。また地下鉄の運行を、平常より4時間以上も早い午後8時に終了すると明らかにした。

香港政府は8日の声明で「マスクを着用した大勢の暴徒による大規模な破壊行為が繰り返しみられた」とし、「高い場所から自転車が落とされ」、警官が負傷したと明らかにした。また多くの地区で道路が封鎖されたとした。

連休中のデモでは、現金自動預け払い機(ATM)、中国系の銀行や店舗が破壊された。通常は多くの客で非常ににぎわう時期にもかかわらず、レストランやショッピングモールは時間を早めて閉店した。

*内容を追加しました。

[香港 8日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中