雇用延長で老後の生活水準はどうなるか
まとめと今後の課題
就労延長や公的年金の繰下げ支給の選択により、退職後に生活水準を引き下げざるを得ない世帯の割合がどの程度減少するのかを確認した。その結果、公的年金繰下げ支給は、生活水準の低下を抑制する効果は限定的であり、比較的に余裕のある世帯がより高い生活水準を維持する効果が大きいことがわかった。一方、就労延長には、生活水準の低下を抑制する効果が大きいことが確認された。当然ながら、より高い収入が期待できる就労パターンほど、生活水準の低下を抑制する効果が大きいが、パートやアルバイトの従業員として就労する場合でも、十分な効果が確認できた。また、就労延長の効果は所得の低い世帯ほど大きいこともわかった。
しかし、就労延長による生活水準の低下を抑制する効果を勘案してもなお、およそ50代の3割程度は生活水準が低下する可能性が極めて高く、かつ低下率が10%を超えることが見込まれる。75歳や80歳まで働くといった選択肢もあるが、自宅を含む保有資産の活用や、長寿年金など相互扶助を可能とする金融商品の活用も選択肢の一つであると考えられる。今回の結果と同様に、世帯の所得水準や老後の資金の準備状況によって各選択肢の効果は異なる可能性が高い。様々な選択肢を定量的に確認することで、読者のより良い選択につながることを願い、今後も引き続き分析を進めたい。
*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。
[執筆者]
高岡 和佳子
ニッセイ基礎研究所
金融研究部主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
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