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暗号通貨

思いのほか大きいPayPalがLibraから脱退したことの意味

2019年10月7日(月)15時30分
楠正憲(国際大学Glocom 客員研究員)

Libraの試みが藪蛇になる?

早くもLibraが挫折しつつあることは、必ずしもステーブルコイン全般の未来に対して影を投げかけるとは限らない。マネーロンダリング規制を潜脱する支払い手段としてのLibraに対しては各国が協調して規制の穴を塞ぎつつあるが、例えばセキュリティートークンなどの買付資金として、AML/KYC規制に服するかたちでのステーブルコインの発行までが規制されるとは限らないからだ。

とはいえLibraの試みが藪蛇となって、暗号資産や支払い手段に対する規制そのものに対して見直しが入ることも考えられる。今年来年と各国当局やFATFがどういった規制を導入するのか、VISA、Masterといったクレジットカード・ブランドや、StripeなどPayPal以外の決済事業者が今後Libraとの距離をどう取るのか、引き続き目が離せない展開となりそうだ。

◯こちらの記事は、ヤフー個人からの転載です。

[執筆者]
楠正憲(国際大学Glocom 客員研究員)
インターネット総合研究所、マイクロソフト、ヤフーなどを経て2017年からJapan Digital DesignのCTOに就任。2011年から内閣官房 番号制度推進管理補佐官、政府CIO補佐官、内閣府 情報化参与 CIO補佐官として番号制度を支える情報システムの構築に従事。東京大学 大学院非常勤講師、国際大学GLOCOM 客員研究員、OpenIDファウンデーションジャパン代表理事、ISO/TC307(ブロックチェーンと分散台帳技術に係る専門委員会)国内委員会 委員長、日本ブロックチェーン協会 アドバイザーなどを兼任。FinTech、仮想通貨、財政問題、サイバーセキュリティについて執筆。

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