最新記事

中国

中国建国70周年の香港、警察がデモ隊に催涙弾 多くの店舗が休業

2019年10月1日(火)18時15分

中国建国70周年、反政府デモが続く香港では、祝賀ムードを阻害する事態を防ぐため、当局が厳戒態勢を敷いている。写真は中国と香港の国旗を掲げるヘリコプター。同日香港で撮影(2019年 ロイター/ATHIT PERAWONGMETHA)

中国建国70周年の1日、香港では数千人が各地で反政府デモに参加、警察が催涙弾を発射する事態となっている。

警察が催涙弾を発射したのは、黄大仙区と沙田区。香港警察は1日、火炎瓶の材料などを所有していたとして若者5人を前日遅くに逮捕したことも明らかにした。

市内中心部ではバリケードが張られ、多くの店舗が休業、機動隊が多数配備された。

中国がこの日を経済発展を世界に誇示する機会ととらえる一方、デモ隊側は民主化運動を強化して香港の実態を国際社会に訴えかける方針を示している。

警察はこの日に計画されるデモ行進に許可を出していなかった。警察当局は30日、「非常に暴力的な攻撃」を見込んでいるとしたが、詳細には言及しなかった。

地下鉄を運営する香港鉄路(MTR)は一部の駅を封鎖した。

香港での祝賀式典はコンベンション・アンド・エキシビション・センターで行われた。冒頭の国旗掲揚は屋内での実施に変更された。香港当局はロイターに対し「国旗掲揚式の厳粛かつ秩序立った実施を確実にするため」と説明した。

同センターに続く道路も封鎖され、厳重な警備が敷かれた。

式典では北京訪問中の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に代わり、張建宗(マシュー・チュン)政務官があいさつし、香港は中国の「一国二制度」政策の下で、恩恵を受けてきたと強調した。

その上で、「違法な集会や道路封鎖、火炎瓶や放火、市民への攻撃など過激な一部デモ隊の暴力激化は、社会の秩序を乱すだけでなく、法の支配に深刻な課題をもたらし、市民の安全と日常生活に影響を及ぼしている」と指摘。抗議活動は「すでに下振れ圧力に直面している香港経済にさらなる打撃を与えた」と批判した。

市内中心部に近いIFCモールはこの日、全面休業した。同ショッピングセンターには米アップルの店舗や米宝飾品大手ティファニー、仏化粧品大手ロクシタン・インターナショナル<0973.HK>の店舗が入っている。

建国記念日を含む大型連休には通常、本土から観光客が押し寄せるが、IFCをはじめ複数の主要モールが休業しており、小売企業は書き入れ時を逃すことになる。

張政務官は、先週行われた政府と市民による初めての対話集会について「重要な一歩」と述べ、さらなる対話を行う方針を示した。

式典会場の外では抗議者らが「建国記念を祝うのではなく、嘆く日でしかない」などと叫び、衝突で拘束されたデモ参加者らを解放するよう求めた。

香港では中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案をきっかけに、中国政府への抗議活動が4カ月近く続いており、警察とデモ隊が衝突する事態が相次いでいる。

*内容を更新しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191008issue_cover200.jpg
※10月8日号(10月1日発売)は、「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集。消費税率アップで経済は悪化する? 年金減額で未来の暮らしはどうなる? 賃貸、分譲、戸建て......住宅に正解はある? 投資はそもそも万人がすべきもの? キャッシュレスはどう利用するのが正しい? 増税の今だからこそ知っておきたい経済知識を得られる特集です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中