インドネシア、第2期ジョコウィ政権発足 政党力学で妥協の人事は前途多難
随所に政党への配慮が垣間みえる人選
ジョコ・ウィドド大統領は8月に開かれたPDIPの党大会で党首のメガワティ・スカルノプトリ元大統領から「総選挙で最大議席を獲得したのだから閣僚の数もPDIPは最大数であるべきだ」と釘を刺され、「最大数になる」としていた「約束」も最大数の5人をPDIPから選んだことで果たした形となった。
さらに経済専門家で日本大使からエネルギー鉱物資源相に抜擢されたアリフィン・タスラム氏はメガワティ元大統領とは旧知の仲。同氏起用にも元大統領の推薦があったものとみられ、依然として元大統領の政界への強い指導力、影響力が改めて印象付けられた人選ともいえる。
与党入りの情報が飛び交っていた民主党も党首のユドヨノ元大統領はメガワティ元大統領とは犬猿の仲であったことは有名で、和解したとみられていたが、まだ完全には関係修復ができていなかったことが入閣ゼロになったとみられている。
最大の焦点だったプラボウォ氏の入閣にはナスデムのスリヤ・パロ党首が強い反対を示していたとされるが閣僚ポスト3つで「手を打った」との観測も出ている。
難問山積のジョコ・ウィドド政権
ジョコ・ウィドド大統領は新たな顔ぶれの内閣で直面する数々の諸問題に解決の道筋をつけることが待ったなしで求められている。
パプア地方の騒乱状態への対応、中東などから流入するテロ組織メンバーや地元テロ組織などとのテロとの戦い。さらに再び状況が厳しくなり、マレーシアやシンガポールに多大な影響を与えているスマトラ島などの森林火災による煙害への対応。ジョコ・ウィドド大統領が1期目で推進してきた港湾、空港、高速道路、鉄道網などのインフラ整備の目標達成、そして突然大統領が言いだした「首都移転問題」など、やるべき問題は山積している。
10月20日の大統領就任式での就任演説で「インドネシアは2045年までに世界経済5大国入りを目指す」と高らかに宣言した。その一方で国内に残る数々の人権侵害事件への言及が皆無だったことから人権団体や民主化組織、学生団体などが反発する事態になっている。
1998年の民主化実現の前後や、1999年の東ティモールのインドネシアからの独立を問う住民投票前後に多発した人権侵害事件のほとんどが未解決であり、さらに独立運動が続いたアチェ州や現在も独立運動が続くパプア地方でも人権侵害は続いている。
こうした人権問題への真摯な取り組みも2期目のジョコ・ウィドド大統領には求められているが、人権問題への関与疑惑が残るプラボウォ氏の国防相就任で人権問題への対応がどこまで進められるか、その指導力が問われることにもなりそうだ。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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