最新記事

韓国

韓国3大未解決事件「華城連続殺人」犯人が自白 映画は解決にどこまで迫った?

2019年10月2日(水)19時55分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)


イ・ヒョンホくん誘拐殺人事件を元にした映画『あいつの声』 Albatrosmovie / YouTube

三大未解決事件をめぐる共通点

これらの3つの事件には共通点がある。まず1つ目はすべて1991年に犯行が行われている点だ。「イ・ヒョンホくん誘拐殺人事件」は1月29日。「カエル少年事件」は3月26日。「華城連続殺人事件」は、1986年から犯行が行われていたが、最後の10人目の犯行は1991年4月3日である。2つ目の共通点は、1991年の犯行だったため、2006年に全ての時効が成立してしまったという点だ。今回、自白した華城連続殺人事件の容疑者以外は未解決のまま犯人はまだ捕まっていない。

3つ目の共通点は、すべて映画化されていることである。華城連続殺人事件は「殺人の追憶」として映画化された以外に、「イ・ヒョンホくん誘拐殺人事件」は『あいつの声』。「カエル少年事件」は、『カエル少年失踪殺人事件』という邦題で日本でも公開されている。この3作品では、残忍な犯行の詳細と共に、警察の捜査の失態が積み重なっていく姿を描写している。これも共通点の一つと言えるだろう。映画的フィクションや誇張されて描かれた部分はあるかもしれないが、観客は歯がゆく感じてしまうほど当時の捜査への不信感が色濃く描かれている。

さらに、共通点として被害者が女性と子供という社会的弱者である点も付け加えておきたい。特に性別でいうと「カエル少年事件」以外の2件は、容疑者がともに男性であることが捜査で判明しており、自分よりも体力などの弱い立場の女性、子供を狙った非情さがうかがえる。

もちろん性別や年齢だけで力関係を判断するわけではないが、華城連続事件の犯人特定のニュースが報道された日でさえ、以下のような報道がされている。全州群山市で知的障害のあった20代の女性を、自分の言うことを聞かないという言う理由で、暴行の末殺害し死体遺棄したとして同居人2人を逮捕したという。このように自分より弱い立場の人を狙った卑劣な事件は、現在もどこかで繰り返されているのだ。

韓国では、日本以上に#MeToo活動も活発であり、今まで被害者となることの多かった女性たちが団結し声を上げ始めている。もうこれ以上弱い立場だと言わせぬように、自分の身は自分で守る強さと、一人ひとり立ち上がる必要がある。そのためには、今現在未解決である数々の事件の究明と容疑者確保が力になっていくだろう。


カエル少年事件を元にした映画『カエル少年失踪殺人事件』 YouTube ムービー / YouTube

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中