最新記事

韓国

韓国3大未解決事件「華城連続殺人」犯人が自白 映画は解決にどこまで迫った?

2019年10月2日(水)19時55分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)


華城連続殺人事件を元にした映画『殺人の追憶』 YouTube ムービー / YouTube

覚えていることが犯人に迫る

「イ・ヒョンホくん誘拐事件」を元にした映画『あいつの声』では、映画の最後に実際に誘拐犯がかけてきた犯人の音声を流して公開当時大きな話題となった。また、映画『殺人の追憶』では、シナリオを描くにあたり、ポン・ジュノ監督は事件についてかなりの時間を準備に費やし、犯人のプロファイリングを行ったという。

その結果、犯人は自己顕示欲の高い人物だと断定。この犯人が映画館に自分が起こした事件の映画を必ず見に来ると見込んだ監督は、映画のラストシーンで犯人を追っていたパク刑事のカメラ目線のアップを映している。犯人は公開当時映画館でこの映画を見ていたかもしれない。スクリーンからの、その鋭い視線は容疑者の罪悪感を少しは刺激しただろうか? 劇中、ソウル市警若手刑事を演じたキム・サンギョンは、当時インタビューにて実際の事件を映画化し蒸し返すことへの批判に対し「(事件を忘れず)覚えていること自体が報復の始まりだ」と答えた。

事件を映画化することによって、世間の注目を集めることができる。今回の華城連続殺人事件の容疑者特定にどれだけ映画が役割を果たしたのかは不明だが、犯人特定の一報がニュースで駆け巡ったとき、どのメディアも「映画のモデルになった事件」と伝えており、事件の記憶の風化を防ぐ一助にはなっていたのではないだろうか?

もちろん、未解決事件の映画化は現在進行形の捜査情報をベースにしているため、遺族の気持ちや捜査妨害の可能性を考えると、扱いは慎重なるべきだが、もしも映画の力が少しでも事件解決に役立つのなら、映画化することも賛成だ。しかし、一番望ましいのは、このような実際の事件をベースにした無残な殺人事件映画が1本でも制作されることのない世の中になることだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中