最新記事

韓国

韓国・文在寅大統領が最低を更新した、もう1つの支持率

2019年9月20日(金)12時00分
ニューズウィーク日本版編集部

チョ長官の起用・指名及び任命に対する世論の動向

choguku0919.png

*7月1日はチョ氏の起用検討、8月14日~9月2日は指名、9月10日及び19日は任命に対する支持率(%)、**出所:REALMETER社(韓国)各種資料よりニューズウィーク日本版編集部作成


ところが任命前後からチョの親族に対するスキャンダルに進展があると、チョの任命に対する支持率がにわかにぐらつきはじめた。9月6日に妻が私文書偽造で在宅起訴されると、16日には娘がソウル中央地検から任意で事情聴取を受けた。さらに同日にはチョの一族が出資するファンドを経営する親族が横領と背任容疑で逮捕された。

こうしたスキャンダルを受けて実施された世論調査で、どうやら市民らはチョの任命に対して本格的なNOを突き付けたようだ。任命に対する支持率35.3%と「最低」を更新、不支持率も「過去最大」の55.5%に達した。

自身の支持率でも過去最低を記録した文にとってはダブルパンチとなる結果だ。それでも文が野望の1つに掲げる検察改革が達成できれば名誉の負傷といえるかもしれない。文は歴代の革新政権に対して抵抗を続けてきた「検察の民主化」を実現しようと躍起で、チョの任命はその重要な一歩だった。

実はチョの指名をめぐる動きの中でも、文政権と検察の間で激しいせめぎ合いが起きていた。チョの指名をめぐって発覚した親族らの疑惑についての検察の捜査に、政権内部と一部世論から行き過ぎた捜査ではないかとの懸念が示されていた。チョの指名支持から検察の捜査姿勢に争点を切り替える動きに見えなくもなかったが、文にしてみれば検察の横暴ぶりを世論に訴えて支持回復を狙ったのかもしれない。

しかし文政権はここでも「敗北」していた。リアルメーター社は9月初旬に「チョ・グク法務部長官候補者の検察捜査に対する国民世論」調査を発表。検察の捜査はやり過ぎなのか、それとも妥当かを問う内容だった。

結果は、「原則に則った適切な捜査」が52.4%と、「検察改革を防ぐための(検察による)組織的抵抗」の39.5%を大きく上回った。さらに9月11日に発表された別の世論調査結果では、「チョ・グク氏の検察改革は成功するか失敗するか」の問いに対して「失敗する」が46.6%、「成功する」が45.0%となった。政権としては「拮抗している」と前向きに捉えたい結果かもしれないが、チョの指名に対する支持がこれまで一度も過半数を超えていないことと併せて厳しい現実を突きつけられているというのが実態かもしれない。

検察改革を掲げる文の試練は始まったばかりだが、少なくとも出鼻は大きくくじかれているようだ。

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾総統、太平洋3カ国訪問へ 米立ち寄り先の詳細は

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中