最新記事

タイ

ウルトラマンブッダに賛否両論 微笑みの国タイ、仏教界も告発と容認で二分

2019年9月13日(金)17時01分
大塚智彦(PanAsiaNews)

タイで仏教への冒涜と問題になっているウルトラマンブッダ。  ไพรวัลย์ วรรณบุตร via facebook

<東南アジア各国では、日本のアニメやマンガと共に特撮ヒーローも高い人気を誇る。なかでもタイではウルトラマンシリーズが日本と合作で映画化されたほどの人気だが......>

仏教国タイでウルトラマン騒動が起きている。法衣の代わりにウルトラマンスーツを着用したブッダが描かれた絵が公共の場に展示されたところ、「不謹慎だ」「仏教徒を侮辱している」と非難が殺到、掲示物が撤去されるとともに作者の女子大生が仏教界の高僧に謝罪する事態に追い込まれているのだ。

一部の批判者は女子大生や作品を支持した芸術家などに対して法的手段に訴えるという強硬な動きをみせている。その一方で、仏教界からは「女子大生に仏教やブッダを侮辱する意図はなかった」として事態を沈静化しようとする動きも出ており、「微笑みの国タイ」の寛容性が問われようとしている。

タイ東北部ナコンラチャシマ県にあるナコンラチャシマ・ラーチャパット大学4年生の女子大生が描いた絵画が「ナコンラチャシマ・ショッピングモール」に9月初めに展示された。

展示された絵には様々な7つのポーズをとるウルトラマンが描かれているが、頭部は黄金色のブッダとなっているほか、仏座に光背とともに鎮座するブッダも頭部以外はウルトラマンが描かれている。

法衣の代わりにウルトラマンスーツを着法したブッダでもあり、逆に言えばウルトラマンの頭部がブッダになっているものともいえる絵となっている。

この絵のことがネットに投稿されるとたちまち批判が殺到し、炎上状態となったと地元紙「ネーション」は伝えている。

「仏教徒を侮辱している」「不謹慎だ」「罰当たり」などの批判の声を受けて、ショッピングモールは展示していた絵を撤去するとともに、絵の作成者である女子大生は大学関係者と共に地元の仏教寺院に高僧を訪れて謝罪する事態に追いこまれた。

女子大生は「ブッダを侮辱する意図はなく、人類を救い、地球に平和をもたらすスーパーヒーローとしてウルトラマンの姿をした仏陀を描いた」としながらも大きな騒動に発展したことについて高僧の前で正座して深く謝罪したという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 4
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 5
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 8
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 9
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 10
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中