カザフスタン政府のネット監視からユーザーを守れ
トカエフ大統領の在任中もネット監視の試みはなくなりそうにない MUKHTAR KHOLDORBEKOV-REUTERS
<「証明書」をインストールさせて通信を傍受──懲りないカザフスタン政府vsIT大手の戦いの行方は>
グーグル、モジラ、アップルは8月下旬、それぞれのブラウザでカザフスタン政府による市民のネット利用への監視に対抗する措置を講じたと発表した。これで米ブラウザへの信頼回復は期待できるかもしれないが、カザフスタン政府によるネット監視への懸念は尽きない。
7月下旬、政府は国内のネットユーザーに政府発行の「ルート証明書」のインストールを迫った。証明書をインストールすれば、暗号化されているHTTPS通信が政府に傍受され、パスワードやクレジットカード情報や私的な交信内容など、ネットで入力・投稿したあらゆる情報を読み取られる恐れがある。
政府がルート証明書をネット統制に利用しようとするのは今回が初めてではない。2015年にも同様の試みが内外の反発に遭って中止されている。
地元メディアによると、証明書の発行元サイトの所有者は一個人。カザフスタンの秘密警察であるカザフスタン国家安全保安委員会(KNB)とのつながりが疑われている。
数週間後、KNBはこの証明書の発行中止を発表、政府機関をサイバー攻撃から守るシステムの「試行」だと釈明した。証明書は技術的には通信を傍受するための典型的な「中間者攻撃」で、国内のネットユーザーに対する実質的なセキュリティー侵害と言える。
モジラとグーグルは8月21日、それぞれのブラウザ(ファイアーフォックスとクローム)がカザフスタン当局の傍受を可能にする証明書をブロックすると発表。英語のほかロシア語とカザフ語でも人々に呼び掛けた。
アップルも自社のブラウザ、サファリで同様の対抗措置を講じた。カザフスタンの弁護士グループは、政府発行の証明書のインストールを利用者に強要した携帯電話事業者を訴えた。
ネット弾圧の予行演習か
検閲を監視する団体はカザフスタンのネットユーザーに、バーチャル・プライベートネットワーク(VPN)やトーア(Tor)のようなセキュリティーの高いプログラムを使うよう勧めている。
人権擁護団体フリーダム・ハウスによればカザフスタンは「自由な国ではない」。インターネット自由度スコアは100点中62点。アゼルバイジャンやジンバブエより低く、ロシアとトルコよりわずかにましな程度だ。