燃え尽きるアマゾンの熱帯雨林 先住民の命の糧が失われる
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動物たちが暮らし、薬草が生える森が焼失し、命の糧を失った先住民は、今後の生活を懸念している。写真はアマゾナス州のジャングルの焼け跡。8月24日撮影(2019年 ロイター/Bruno Kelly)
パキリ村の副村長は、村にとって来年は苦難の時になると覚悟している。アマゾンの森林を襲う火災が、村人たちの食料や医薬品、生計基盤を焼き尽くしているからだ。
デウスディマル・テンハリム副村長は、村民たちが狩猟採集の場としている保護対象地域のうち、約6万ヘクタールが焼失したとみている。しかも、まだ鎮火していない。
「村の消防団では対処できない。ブラジルナッツを採っている木も失われた」と、副村長は言う。ブラジルナッツは近隣の町に売ったり、儀式や医薬品にも使われていると話す。
「我々にとっては神聖なものだ。だが、来年の2020年、ジャングルでブラジルナッツを見つけるのが今より難しくなるのは間違いない」
アマゾン熱帯雨林の役割
ブラジルの国立宇宙研究所(INPE)は8月、アマゾン川流域の火災件数が2010年以来で最多を記録したと発表した。
国際社会からは、世界最大の熱帯雨林であるアマゾンを伐採などの脅威から保護する措置を強化するよう、ブラジルに求める声が高まった。
アマゾンの森林は地球温暖化を食い止める鍵と科学者たちは見ており、アマゾンから発生する水蒸気が、南米の広範囲にわたる農業に不可欠な降雨をもたらしている。
アマゾナス州にあるテンハリム先住民居住区は、中規模の2つの町に挟まれている。合計180万ヘクタールの土地に、先住民の複数の部族が暮らしている。
パキリ村のデウスディマル副村長は、彼の部族を脅かす火災は人為的なものだと確信している。自らも消防団の訓練を受けている副村長は、出火した地点などから判断すれば、火災が自然発生したものかどうかすぐに分かるという。
「完全に、(人間の)欲望によるものだ」と、彼は言う。農地開拓のために農民が森林に火を放ち、「我々は直接、間接に傷つけられている」と、デウスディマル副村長は語る。
焼失している資源はブラジルナッツだけではない。
居住民の健康面の面倒をみているライムンディンハ・テンハリム氏は、人々が病気になったときに使う薬草や植物の根が見つからなくなるのではないかと憂慮している。彼らには、それ以外の治療手段がほとんどない。
居住区内の村々から大きな街へ向かう交通手段は、最も近い幹線道路を1日1回通過するバスぐらいである。そのため、ほとんどの病気や怪我は、森林に生える薬草を使った民間療法で治療されている。その森林が燃えていると、ライムンディンハ氏は言う。
火災が広がってからといもの、彼女は保存してあった生薬を使って治療に当たっている。火災による煙を吸ってしまった先住民の子どもたちの治療もその1つだ。
「(森には)咳の薬もあるし、外傷のための薬も何でもある」と、彼女は言う。「それがなくなったら、どうしていいか分からない」