本場スコットランドで味わう至高のスコッチ旅
Walking With Whisky
最高のウイスキーはゆっくりと花開き、1秒おきに味覚が変わる DAVID CROCKETT-MOMENT/GETTY IMAGES
<時代はワインセラー巡りからウイスキー・ウオークへ──スコットランドで高級シングルモルトを飲みまくる>
ブドウ畑とワインの試飲はもう古い。最新の流行はスコッチ発祥の地を訪ね歩くウイスキー・ウオークだ。
英スコットランドは昔からずっと人気の観光地だった。けれど今、観光客は特定の目的──古いスコッチを飲み倒す旅に夢中なようだ。
スコッチウイスキーはスコットランドの歴史と同じぐらい古くからあるが、一大産業になったのは19世紀。ウイスキーへの課税が大幅に引き下げられ、儲かるビジネスになってからだ。
現在では、キャンベルタウン、ハイランド、アイラ、ローランズ、スペイサイドの5つの地域に120を超える蒸留所があり、ビジネスは活況を呈している。強力な追い風となっているのがアメリカでの「ウイスキー・ルネサンス」だ。
ここ数年、ニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスなどでは、ウイスキー専門のバーが次々にオープン。同時にウイスキー造りへの関心も高まった。
スコッチウイスキー協会の発表によると、2018年にスコットランドのウイスキー蒸留所を訪れた観光客は過去最高の200万人に達した(2017年は190万人)。大半がドイツ人とアメリカ人だ。2019年はさらに増加が見込まれている。
ラガブーリン蒸留所を所有するディアジオなどの酒類大手にとっては、絶好のビジネスチャンスだ。同社は観光客のスコッチ体験を「一変させる」ため、今後3年間で1億9000万ドルを投資すると発表した。
これはぜひ、ブームの実態を自分の目で確かめなければ!というわけで今年5月、アイラ島に直行した。アイルランド北部から約40キロ、スコットランド西岸のヘブリディーズ諸島南部にある、風が強い小さな島だ。
ワインとはここが違う
アイラ島はブルーベルの青い花と太古の森、手付かずのビーチが美しい自然の島。スコットランドで最も有名な9つの蒸留所の所在地でもある。原料の麦芽を乾燥させるとき、ピート(泥炭)を燃料に使うスコットランドの代表的な高級シングルモルトウイスキーは、全てここで造られる。
私はグラスゴーから飛行機に乗り、着陸後すぐ島の西側、インダール湾のほとりに向かった。ここには小規模生産のモダンなクラフトウイスキーで知られるブルックラディ蒸留所がある。