韓国・文在寅政権が苦悩する財閥改革の現在地
――一族経営は韓国財閥を韓国財閥たらしめている大きな特徴?
1つの特徴であることは間違いない。中華系や東南アジア系の財閥との比較研究を詳しく調べる必要はあるものの、少なくとも日本の財閥とは大きく異なる特徴だ。
――安倍グループ長ご自身はどのような対策が望ましいと考えるか。
いわゆる「事後規制」をより重視すべきではないかと考えている。すなわち、財閥が不正を働いた場合に厳しく取り締まることだ。そのためには金尚祚氏も当初重視していた、公取委の機能強化が対策の1つになるだろう。大上段に構えた改革よりも、そうした地道な動きの方が重要だ。
従来の財閥政策は「事前」規制を重視する傾向があった。つまり、財閥は経済活動においていろいろな弊害を伴うので、弊害が出ないように事前に規制を掛けようという対策だが、そうした政策は往々にして副作用を伴うし、抜け道を生むことにもなる。実際、あまり効果が出ていない。
――今後の財閥改革において国民の溜飲が下がるような目玉政策はある?
財閥改革においては最終的にどういう形に収まれば望ましい絵姿なのか、コンセンサスがないのが難しいところ。こうなればいいという理想の形は誰も提示していないし、あまり議論されてもいない。
経済活動の多くが財閥系企業に集中しているので、その度合いを下げたほうがいいという程度の合意は得られているが。シンプルな持ち株会社を作るというのも、そうすれば従来よりは適切な形態になるのではないかという、「ぼんやりとした」絵姿があるのみだ。
――実際、理想形の模索は難しいところだ。
あまり型にはめてしまうと企業の事業展開に障害が出かねない。実際、金尚祚氏も具体的な絵姿を提示しているわけではなく、曖昧にしている部分も多い。今のままではよくないという点では一致しているが、理想の着地点は見えていない。
論者によっては、オーナーによる財閥所有が害悪なので、日本の旧財閥のように特定のオーナーをなくす改革が必要と言う人もいるが、そこは財閥にとって「マジノ線」なので闘争が生まれてしまう。そうなると改革は現実味を失う。実際、政府もそこまでは言及していない。
――政府、財閥、国民それぞれの立場で財閥改革に対して抑制的だ。
何かあれば財閥(に頼る)という部分は残っている。景気が悪くなれば財閥を頼りにせざるを得ない面があり、南北融和において経済協力をするにしても財閥の力を借りざるを得ない。日韓の貿易問題が起きると財閥支持の声も出たりする。