最新記事

韓国

嘘つき大統領に「汚れ役」首相──中国にも嫌われる韓国

2019年8月27日(火)18時57分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

今では日韓は敵国同士のようなもので、さらにトランプにここまで痛罵されて日米側に立っているのも困難だろう。

しかし韓国はもともとアメリカのバックアップで誕生した国。親米派の勢いは無視できない。

一方、何百年にも及ぶ中国への朝貢に馴染んできた度し難いほどの中国信奉者たちがいるのも事実だ。一部の国粋主義者たちだが、「アメリカにではなく中国に付いていけば、今後200年は生きていける」と言っていると、ある韓国人研究者が教えてくれた。それは韓国の儒学者たちに多いそうだ。

それでいながら「統一日報」のように「韓国を亡国へと導く親中・従中派メディア」と、親中を痛烈に罵倒する一派もあり、いずれにしても「どこに従属するか」で世論が分かれるという悲劇がある。

したがって、仮に文在寅政権の間は親中になったとしても、韓国内ではそれが長続きするとは思えない。文在寅政権を倒すのは避けられない流れかもしれないが、かといって文在寅政権を倒せば、何か良い政権が生まれるのかといったら、そうでもあるまい。
 

日本は?

ひるがえって日本は本当に「独立国家」なのかと考えた時に、迷いなくそれを「是」とできる人も少ないだろう。第二次世界大戦で敗戦国となってしまった日本は、アメリカの占領下で「民主化」が進行しただけであって、サンフランシスコ平和条約で「独立」を勝ち取ったと言っても、同時に日米安全保障条約の締結を余儀なくされて、アメリカ軍の「保護下(?)での「独立」でしかない。

アメリカ軍の保護は要らないと言った瞬間に、日本は軍隊を持つしかないところに追い込まれる。

「再軍備はするが戦争はしない」と誓って軍隊を持つのか?

そうすれば完全な独立国家になるだろうが、それをアメリカが歓迎するのかと言えば、これもまた複雑だ。

ここまで考えて来ると、日本もまた、実は「仮初めの独立」しか持っておらず、強い方を向くという傾向は否めない。軍隊を持ったところでよほどの強軍でない限り「強い方を向く」傾向はなくならないだろうが、少なくとも今ドナルド・トランプという大統領が現れて言論弾圧をする中国にも堂々と立ち向かっているというのに、日本は何をしているのか?

習近平国家主席の来日のための赤絨毯を敷くのに必死になっていたり、どこかの大臣が中国の外交部女性報道官と自撮りでツーショットを撮って嬉々としているのを見ると、何を考えているのかと、ふと「奴隷根性」という言葉が頭をよぎるのを打ち消すことができないのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ政権による貿易戦争、関係業界の打

ビジネス

中国の銀行が消費者融資金利引き上げ、不良債権増加懸

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、3月速報2.2%に低下 サービ

ビジネス

英製造業PMI、3月は23年10月以来の低水準 新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中