「香港鎮圧」を警告する中国を困惑させる男
THOMAS PETER-REUTERS
<「われわれは暴動を迅速に鎮圧できる」と断言し、「暴動鎮圧」演習の動画を公開した中国。一方、なぜ自分が中国政府から責められなければならないのか「さっぱり分からない」と言うのはあの人物>
中国は香港の秩序を取り戻せる──香港の旧宗主国であるイギリスで、中国の劉暁明(リウ・シアオミン)駐英大使はそう言い放った。
逃亡犯条例改正案をめぐる香港の混乱について、劉は8月15日にロンドンで会見。「事態がさらに悪化し、香港政府にとって制御不能になれば、中央政府は座視しないだろう」と話し、「われわれには暴動を迅速に鎮圧できるだけの十分な解決法と権力がある」と断言した。
デモ隊と香港政府の対立はここ数カ月で激しさを増し、空港閉鎖や警察との衝突にまで発展。米英はデモ隊への支持を表明し、中国は欧米諸国がデモの「黒幕」だとの疑念を募らせている。
劉は「外国勢力」に向け「香港と中国の内政に干渉すること、暴力に加担することをただちにやめるべきだ」と警告した。
既に中国軍は、着々と態勢を整えている。香港駐屯部隊は、射撃や爆破による「暴動鎮圧」演習の動画をネット上で公開(次のページ)。本土では、香港と隣接する広東省深圳に武装警察部隊を配備し(写真)、香港を牽制している。
トランプ米大統領は13日、「中国政府は香港境界に軍を移動させている。皆が落ち着いて安全を確保するべきだ」とツイートした。デモ隊側を支持するとたびたび明言しながらも、なぜ自分が中国政府から責められなければならないのか「さっぱり分からない」とも書いている。
トランプは深刻化する米中の貿易戦争で習近平(シ ー・チンピン)国家主席が取引の成果を狙うのならば、「まず香港に人道的に対処する」必要があるともほのめかしている。15日には、「習が抗議活動家らと直接面会すれば、香港の問題は円満に賢明な形で解決されるだろう」と、対話を促した。
一方で、ペンス副大統領やポンペオ国務長官らは反体制派と面会するなどより直接的にデモ支持を表明。中国は疑心暗鬼に陥っている。
<2019年8月27日号掲載>
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※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直属・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。