最新記事

香港の出口

「香港鎮圧」を警告する中国を困惑させる男

2019年8月20日(火)07時20分
トム・オコナー

THOMAS PETER-REUTERS

<「われわれは暴動を迅速に鎮圧できる」と断言し、「暴動鎮圧」演習の動画を公開した中国。一方、なぜ自分が中国政府から責められなければならないのか「さっぱり分からない」と言うのはあの人物>

中国は香港の秩序を取り戻せる──香港の旧宗主国であるイギリスで、中国の劉暁明(リウ・シアオミン)駐英大使はそう言い放った。

逃亡犯条例改正案をめぐる香港の混乱について、劉は8月15日にロンドンで会見。「事態がさらに悪化し、香港政府にとって制御不能になれば、中央政府は座視しないだろう」と話し、「われわれには暴動を迅速に鎮圧できるだけの十分な解決法と権力がある」と断言した。

デモ隊と香港政府の対立はここ数カ月で激しさを増し、空港閉鎖や警察との衝突にまで発展。米英はデモ隊への支持を表明し、中国は欧米諸国がデモの「黒幕」だとの疑念を募らせている。

劉は「外国勢力」に向け「香港と中国の内政に干渉すること、暴力に加担することをただちにやめるべきだ」と警告した。

既に中国軍は、着々と態勢を整えている。香港駐屯部隊は、射撃や爆破による「暴動鎮圧」演習の動画をネット上で公開(次のページ)。本土では、香港と隣接する広東省深圳に武装警察部隊を配備し(写真)、香港を牽制している。

トランプ米大統領は13日、「中国政府は香港境界に軍を移動させている。皆が落ち着いて安全を確保するべきだ」とツイートした。デモ隊側を支持するとたびたび明言しながらも、なぜ自分が中国政府から責められなければならないのか「さっぱり分からない」とも書いている。

トランプは深刻化する米中の貿易戦争で習近平(シ ー・チンピン)国家主席が取引の成果を狙うのならば、「まず香港に人道的に対処する」必要があるともほのめかしている。15日には、「習が抗議活動家らと直接面会すれば、香港の問題は円満に賢明な形で解決されるだろう」と、対話を促した。

一方で、ペンス副大統領やポンペオ国務長官らは反体制派と面会するなどより直接的にデモ支持を表明。中国は疑心暗鬼に陥っている。

<2019年8月27日号掲載>

【関連記事】香港デモで資産価値の5分の1が吹き飛び、キャセイ航空が窮地に
【関連記事】世界が知る「香港」は終わった

20190827issue_cover200.jpg
※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直属・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中