最新記事

気候変動

肉食を減らそう......地球温暖化を抑えるために私たちができること

2019年8月14日(水)16時45分
松丸さとみ

bymuratdeniz-iStock

<国連のIPCCは、気候変動対策には、「食品ロスを減らすこと」と「肉食を減らすこと」がカギとなるという報告書をまとめた......>

食糧全体の3割が食品ロスまたは廃棄に

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はこのほど、農業、食糧生産、森林破壊が気候変動を押し進めている主な要因だとする特別報告書「気候変動と土地」を発表した。この報告書は、52カ国の科学者107人が、これまで発表された7000件以上の研究を分析し、気候変動と土地利用に関する視点からまとめたもの。気候変動対策には、「食品ロスを減らすこと」と「肉食を減らすこと」がカギとなるようだ。

IPCCは、地球温暖化による気温上昇を2度未満に抑えることを目指すのであれば、全セクターにおいて温室効果ガスの排出を減らすことが必須と指摘。中でも農業や林業などの土地利用は、人間が排出している温室効果ガスの23%を占めており、そのため、土地管理をもっと効果的に行えば、気候変動の解決に寄与できるとしている。

報告書によると、現在、生産された食糧のうち25〜30%が食品ロスまたは廃棄となっており、ここからの温室効果ガス排出は全体の8〜10%に上る(なお、食品ロスは単なる食品廃棄とは異なり、農林水産省の定義によると、食べられる状態にあるのに捨てられるものを指す)。

食品ロスや食品廃棄の原因は先進国と発展途上国とで異なり、また地域によっても異なる。しかしこれらを減らすことで、温室効果ガスの排出量が減る上に、食糧品の生産に必要な土地が減るため、より適切な目的で土地を利用できるようになるという。報告書は、収穫技術、保存、インフラ、輸送、パッケージ、小売、教育などを改善することで、食品のロスや廃棄を減らすことができるとしている。

食糧の供給過多は肥満のまん延も引き起こしており、太り過ぎまたは肥満の人は世界人口の4分の1以上(成人20億人)に達していると報告書は指摘している。

肉食減少で地球も自分も健康に

報告書はまた、気候変動を阻止する力になるものとして、肉食を減らす提言もしている。欧米式の食事では、農業に必要な土地が増えるからだ。

例えば、全世界が英国式の平均的な食事を取り入れて英国と同じ量の肉を消費した場合、必要となる農地は、世界で居住可能な土地の95%に達するという(現在と比べ50%増)。世界中が米国の平均的な食生活を取り入れた場合は、世界の土地の178%を農地にしなくてはならなくなる。そのため、食糧供給の面から気候変動にアプローチする場合、食生活を変えることが効果的だと報告書は述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中