最新記事

ブレグジット

「合意なき離脱」ならイギリスは食料不足に見舞われる

UK Will Face Food Shortages From No Deal-Brexit

2019年8月9日(金)16時56分
カルヤン・クマル

10月末に延期された離脱期限は、小売業者にとってさらなる負担となっている。当初の離脱期限だった3月29日に備えて、多くの業者がすでに多額の費用を投入しているからだ。

今回も、離脱がどのように実施されるかはいまだに明確ではない。土壇場で離脱協定が結ばれる、離脱がさらに延期される、合意なき離脱が強行され貿易ルートにさらなる摩擦が生じるなど、さまざまな憶測が飛び交っている状態だ。

イギリス政府は不安がる業界を安心させようと務めてきた。ビジネス・エネルギー・産業戦略省の報道官は、政府は業界を支援する意向だと述べた。

「イギリスは10月31日にEUを離脱する。我々の最優先事項は、ブレグジットに備える消費者と企業の支援だ」

離脱賛成派は、合意なき離脱による混乱は短期的なもので、これを誇張して伝えることは適切ではないと主張する。

離脱派と大きな温度差

このような短期的混乱は、イギリスがEU離脱後にさらに成長するために必要な痛みだというのが、賛成派の見方だ。EUの経済圏にとどまり続けてきたことで、イギリスは中国やアメリカに後れを取ってきたと、離脱賛成派は指摘する。

イギリスのボリス・ジョンソン首相は、合意なき離脱の確率は「ほぼゼロに等しい」と述べている。だが、このところ報道される同政権の基本姿勢を見る限り、合意なき離脱は避けられない情勢だ。

ジョンソンはこれまでEU側代表者との会談を拒否し、離脱協定のアイルランド国境をめぐる「バックストップ条項」も排除すると主張している。貿易協定に合意するまでの間はアイルランド共和国と英領北アイルランドの国境では厳格な国境管理を行わないとする条項。しかしEU側は、ジョンソンの要求を頑として受け入れていない。

(翻訳:ガリレオ)

2019081320issue_cover200.jpg
※8月13&20日号(8月6日発売)は、「パックンのお笑い国際情勢入門」特集。お笑い芸人の政治的発言が問題視される日本。なぜダメなのか、不健全じゃないのか。ハーバード大卒のお笑い芸人、パックンがお笑い文化をマジメに研究! 日本人が知らなかった政治の見方をお届けします。目からウロコ、鼻からミルクの「危険人物図鑑」や、在日外国人4人による「世界のお笑い研究」座談会も。どうぞお楽しみください。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

メタ、反トラスト法訴訟の和解持ち込みへトランプ氏に

ビジネス

カナダ首相、米関税に対抗措置講じると表明 3日にも

ビジネス

米、中国からの小包関税免除廃止 トランプ氏が大統領

ワールド

トランプ氏支持率2期目で最低の43%、関税や情報管
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中