ソーダストリームが、ユダヤ・パレスチナ共存の未来を切り開く
Business as Diplomacy
親近感を勝ち取る努力
こうした雰囲気に違和感を持ち、皮肉な感想を漏らす招待客もいた。これはRPのためのショーなのか。この会社はカルト集団で、従業員は洗脳されて愛社精神に燃えているのでは?
「これからは(「無批判に信じ込む」という意味の慣用句は)『クールエイドを飲む』ではなく、『ソーダストリームを飲む』にしよう」と痛烈に皮肉った外国人ジャーナリストもいた。
それでもユダヤ人の招待客はこのイベントは本物だと言っていた。従業員も自社の取り組みは社会を変える力となり、この国の模範となると確信しているようだった。
壇上に上がったバーンバウムは選挙演説を行う候補者さながら、聴衆を燃え立たせるスピーチを始めた。とはいえ従業員に言わせると、彼は政界入りなど目指していない。経営者としてはちょっと変わっているが、雇用を通じて和平と多民族共生を目指す気持ちに嘘偽りはないという。
カリブ海でプラスチックごみ回収に取り組むなど社会貢献事業に力を入れるバーンバウム。その一方で映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』でジョニー・デップが演じた海賊の扮装をして、ごみ回収船に乗り込むといったおちゃめな一面もある。
招待客がディナーを終えて会場を後にするとき、彼はパレスチナ人の従業員の肩に担がれて踊り始めた。その姿が巨大スクリーンに映し出される。まるでスポーツの試合でひいきのチームの得点に喜ぶファンのようだ。
「ご感想は?」バスに乗り込むとき、見送りの女性に聞かれた。「企業活動ではなく、政治的イデオロギー(のPR)」のようだと答えると、彼女はにっこり笑った。「そのとおりです」
<2019年7月30日号掲載>
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