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核合意

欧州も日本もアメリカのイラン制裁を支持している──米国務省が世界規模の印象操作

U.S. Claims to Have Global Support Against Iran Nuclear Deal, It Does Not

2019年7月17日(水)21時00分
トム・オコーナー

米国務省は15日のアラビア語のツイートで、他にもイギリスやドイツがアメリカを支持しているかのようなことを書いている。たしかにイギリスとドイツは、フランスとの共同声明で、イランの動きに「懸念」を示した。しかし一方では、核合意が「アメリカによる制裁で崩壊の危機にある」と警告もしている。

日本がイランの決定を「強く懸念して」いるという大菅岳史外務報道官の談話も引用しているが、同談話で日本が「国際不拡散体制の強化と中東の安定に資する核合意を支持」している部分は除外している。

ドナルド・トランプ大統領は、2015年の核合意には、イランによるイスラム過激派の支援や弾道ミサイル開発計画を抑止する効果がないという理由で、合意からの離脱を決めた。

国務省がツイートで触れた「米支持国」の中で、トランプの核合意離脱を支持しているのはイスラエルだけだ。ベンジャミン・ネタニヤフ首相は「ウラン濃縮の理由はただひとつ。核爆弾を作ることだ」と言ったという。

その後ネタニヤフは、イランがウラン濃縮度を高めて合意に違反したのに制裁しないEUは、「1930年代のヨーロッパの(ナチスに対する)宥和政策を想起させる」という発言で物議を醸している。

それは今のところ、アメリカとイスラエルにしか通用しない発想だ。

(翻訳:栗原紀子)

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