最新記事

中東

米イラン戦争になれば、イスラエルがイランを襲う

Israel and Iran Warn They Are Within One Another's Attack Range

2019年7月10日(水)18時00分
トム・オコーナー

空軍基地を訪問し、F-35戦闘機編隊を視察するイスラエルのネタニヤフ首相(7月9日) Amos Ben Gershom-Israeli Government Press Office

<核合意から一方的に離脱したアメリカの制裁に耐えかね、自らもついに核合意のウラン濃縮上限を破ったイラン。いきり立ち、戦争準備万端なのは、隣国で仇敵のイスラエルだ>

アメリカとイランの関係悪化に伴い、イランとイスラエルの関係も険悪さを増している。最近、両国は互いに相手が攻撃可能な範囲にあると威嚇しあった。     
           
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7月9日、空軍幹部らと共に国内のネバティム空軍基地を訪問し、米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35の編隊を視察。その攻撃能力を誇示した。

「今回の空軍基地の視察で、あらゆる武器システムと空軍機を確認した」と、ネタニヤフは語った。「私の後ろにあるのは、F-35戦闘機だ。このところイランはイスラエルを破壊すると脅している。ここにある戦闘機はイランやシリアを含む中東のどこにでも到達できることを、イランは覚えておいたほうがいいだろう」

<参考記事>米イラン戦争が現実になる日

イランもイスラエルを「壊滅させる」

イスラエルはこれまでも、シリア国内のイラン関連施設に数百回の攻撃を加えてきた。ただ、かつては秘密裡に行っていたのが、この1年は攻撃に関する情報を堂々と開示するようになっている。

今回、ネタニヤフがイランに噛みついたのは、イスラエルの同盟国アメリカと仇敵イランが互いに恫喝しあうなかで、戦争になればイスラエルを壊滅させるとイランが威嚇したからだ。

「アメリカがイランを攻撃すれば、30分もしないうちにイスラエルの命運は尽きるだろう」と、イランの聖職者で保守派の国会議員でもあるモジュタバ・ゾルヌールはイランの国営ニュース局に語った。「われわれは今もこれまでも、他国に侵攻するつもりはない。だが我が国に侵攻してくる者があれば、容赦なく足を切り落とす」

トランプは1年前の5月にイランの核兵器開発を制限する「イラン核合意」から離脱し、経済制裁を再開した。イランは対抗措置として、合意履行の一部停止を発表。以来、ホルムズ海峡における石油タンカー攻撃など様々な事件が起きるたびにイランを非難し、制裁を強化してきた。

6月20日、イランの革命防衛隊はアメリカの偵察用ドローン(無人機)を撃墜したと発表した。イランの領空を侵犯していたというのだ(米国防総省は否定)。

ドローン撃墜の直後、トランプはイランへの軍事攻撃を承認したが、実行寸前に中止した。民間人の犠牲が多過ぎるとわかったから、とトランプは説明したが、ドローン撃墜がイラン指導部の命令ではなく、一部の過激分子が勝手にやったことと判明したから、という説もある。

<参考記事>イスラエルとイラン、戦争で勝つのはどっちだ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中