最新記事

韓国事情

日本の不動産を買う韓国の資産家が増えている

2019年7月2日(火)17時00分
佐々木和義

景気の悪化が続いて不動産価格の上昇が鈍化し、海外に投資

韓国の投資家は企業と個人を問わず、キャピタルゲインを追い求めてきた。日本のマンションに相当する分譲アパートは、新築時に最も安く購入できる物件が多い。アパート開発業者は居住者が少ないエリアを選んで数百戸から数千戸規模で開発を行うことから生活施設が不足し、交通アクセスの不便な場所は珍しくない。分譲価格が低く設定される一方、開発が進んで入居者が増えると生活環境が改善され、不動産価格は上昇する。バス路線や地下鉄によるアクセスが向上した結果、数倍から10倍近くまで高騰した物件もある。

しかし、先行きが見えない景気の悪化が続いて不動産価格の上昇が鈍化し、値上がりを期待できない投資家はインカムにシフトすると同時に海外に投資する資産家も増えはじめた。

KEBハナ銀行の分析で、資産家の半分以上が国内経済は今後さらに後退すると考えており、緩やかに回復するとみる資産家は10%にすぎなかった。国内で財産を守ることは容易ではなく、むしろ目減りしかねないと資産家は考えているのだ。

不動産投資諮問会社に加えて、銀行も資産家の海外不動産投資を後押しする。事業地域が国内に限定される金融機関は、顧客の海外資産や海外に移住した顧客の資産管理には限界がある。

東京の不動産はソウルでは望むことができない利回り

一方、新韓銀行やKEBハナ銀行など、東京や大阪をはじめ世界の主要都市に店舗網を持っている。国内外に分散する資産の管理は、これら在外ネットワークを持つ銀行に集中する可能性が高く、資産家の囲い込みに繋がるのだ。

東京の不動産は4%から6%の賃料収益率が期待できる。物価上昇と景気悪化で空室率が高まったソウルでは望むことができない利回りと金融機関は説明する。青年就業率の悪化が続いて若い人材が海外に流出し、最低賃金の増額を嫌う企業の海外移転が進んでいる韓国で、資産の海外流出も加速している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中