NBAレジェンドが、現代のヒーロー「キング」レブロンを語り尽くす
A HERO FOR OUR TIME
レガシーなど気にするな
2人の間に敵対感情が生まれた一因は、バークレーがレブロンを「NBA史上トップ5選手」に入れなかったことらしい。だがアスリートが競技に対する愛情やファンからの愛情、あるいはお金のためにプレーするのは理解できるが、「レガシー」にこだわるのは短絡的ではないだろうか。
私も現役時代に数多くの記録を樹立したが、記録のためにプレーしたことは一度もない。チームの一員として、社会活動家として、あるいは地域社会の一員としてのレガシーは残したいが、アスリートとしてのレガシーを残そうと考えたことはない。既に社会的に十分な実績があるレブロンが、あえて選手としてのレガシーにこだわるのは狭量に思える。
昨年夏、レブロンは故郷オハイオ州アクロン市と共同で、恵まれない子供たちのための公立学校を設立した。ここは勉強を教えるだけでなく、生徒の家族が生活を向上させるための支援もする。地域社会へのこうした尽力は、豪快なダンクシュートよりもずっとヒーローにふさわしい。
最後に、メディアに蔓延するGOAT(Greatest of All Time、史上最高)という病、つまり「誰が史上最高の選手なのか」という話題に触れておきたい。
今年1月、レブロンはESPNのインタビューで、自分こそがGOATだと主張した。16年のNBAファイナルで、1勝3敗の劣勢からの逆転劇によってキャバリアーズに数十年ぶりの優勝をもたらした実績を引き合いに出し、「あの逆転優勝が僕を史上最高の選手にした」と語ったのだ。
しかし誰がGOATかという質問は「空を飛ぶのと透明人間になるのと、どちらの超能力がすごいか」と問うのに等しい。彼がそんなむなしいゲームにとらわれているのは残念だ。
私は週に何度かこの手の質問を受けるが、答えはいつも同じだ。ここ何年かでゲームがあまりに大きく変わっており、明確な評価の基準はないと。
だから申し訳ないがレブロン、君はGOATではない。そんな称号は神話上の怪物にすぎない。GOATが誰かという質問は、ユニコーンの角はどれくらい大きいかという質問と同じくらい無意味だ。
それでもレブロン、君が今の時代のヒーローであることは間違いない。その地位は君が自力で獲得したものだ。君のようなヒーローがいることを、私たちは誇りに思う。
(筆者はNBAで20年にわたって活躍し、MVPに6度も輝いた伝説の選手。今も生涯獲得ポイント1位の記録を保持している。著書多数)
<本誌2019年3月5日号掲載>
※7月23日号(7月17日発売)は、「日本人が知るべきMMT」特集。世界が熱狂し、日本をモデルとする現代貨幣理論(MMT)。景気刺激のためどれだけ借金しても「通貨を発行できる国家は破綻しない」は本当か。世界経済の先行きが不安視されるなかで、景気を冷やしかねない消費増税を10月に控えた日本で今、注目の高まるMMTを徹底解説します。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら