最新記事

バスケットボール

NBAレジェンドが、現代のヒーロー「キング」レブロンを語り尽くす

A HERO FOR OUR TIME

2019年7月19日(金)15時54分
カリーム・アブドゥル・ジャバー(元NBA選手)

レブロンは政治的・社会的な問題に対する率直な発言を通じて、その務めを果たしている。とりわけ人種間の平等の実現のために動いている。

いい例が、レブロンの政治的な発言について「ボールを転がすだけで年に1億ドルも稼いでいる人間の政治的発言なんて聞きたくない。黙ってドリブルしてればいい」とコメントした保守系政治トーク番組司会者ローラ・イングラムに対する反撃だ。

レブロンはテレビ局を動かして3部構成の番組『黙ってドリブルしてろ』を作り、彼女の時代錯誤な侮辱に応え、今の二極化した社会でアスリートの果たし得る役割を示してみせた。

私たちは「頭の空っぽなアスリート」という固定観念に基づく保守派の悪口を以前からずっと耳にしてきた。彼らは悪口による攻撃を繰り出して私たちの発言内容にふたをする。私自身について言えば、もうバスケットボールをやっていた時間よりもジャーナリストとして、作家として活動している時間のほうが長い。それでも公に意見を述べるたびに、元スポーツ選手の意見など意味がないと一蹴する人がいる。しかしレブロンは非常に聡明で尊敬されてもいるので、そうした固定観念の排除に貢献している。

私はよく、「あなたが現役だった頃の黒人アスリート活動家と今日の黒人アスリート活動家に大きな違いはあるか」と聞かれる。半世紀前だと、政治的な発言をする選手はボクシングのモハメド・アリやアメフトのジム・ブラウン、メキシコ五輪の表彰台で人種差別に抗議した陸上のトミー・スミスとジョン・カーロスなど、ほんのひと握りだった。しかし今は、声を上げる選手がたくさんいる。だから数には違いがある。ただし選手を取り巻く状況はほとんど変わっていない。

アスリートは今も、憲法で保障された言論の自由の行使を理由に処罰される。私たちが50年前に抗議したことが今も起こっている。そして一部には、ほとんど何も変わっていないという事実よりも「それを思い出させられること」に腹を立てる人がいる。

nba190719-03.jpg

人種差別に抗議したNFLのキャパニック(右) KIRBY LEEーUSA TODAY SPORTSーREUTERS

黒人アスリートなら、もう絶望して諦めたほうが楽かもしれない。それでもレブロンやコリン・キャパニック(試合前の国歌斉唱中に片膝をついて抗議したせいで干されたNFLの選手)をはじめ、多くのアスリートが正義のために闘い続けている。

レブロンにも失敗はある。例えば17年に元NBA選手で現在は解説者を務めるチャールズ・バークレーと対立している。選手補強についてキャバリアーズの経営陣に公然と不満を言ったことについて、バークレーに「泣き言が多く」「不適切」と非難されたレブロンは、「僕のレガシーを否定するのか」と猛反発した。「僕は誰かさんみたいに観客に唾を吐かないし、ギャンブルもしない。日曜日のオールスター戦にちゃんと出場できるのは週末に遊びほうけていないからだ」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中