NBAレジェンドが、現代のヒーロー「キング」レブロンを語り尽くす
A HERO FOR OUR TIME
時間とも戦うアスリート
ヒーローたる者は人に刺激を与え、さあ私に追い付け、追い越せと鼓舞しなければならない。レブロンの優れた身体能力は地道なトレーニングと栄養管理のたまものだ。朝はたいてい5時に起きてエクササイズをする。これをシーズン中は週7日、オフシーズンでも週5日はやる。日課にはステップ台やバイクのエクササイズ、ピラティスや各種のウエートトレーニングがあり、液体窒素で冷やした容器にも入る。
もう1つ、ヒーローに求められるのは非妥協的なまでの一貫性だ。レブロンはトレーニングに年間100万ドル以上を投じ、海軍特殊部隊出身という生体力学の専門家を雇って、休暇にも帯同させている。
無駄な贅沢ではない。レブロンは少年時代から肉体を酷使してきたプロのアスリートだ。何年も前から背中に痛みを抱えている。それでも(いつ引退しても生活には困らないはずなのに)彼は毎年コートに戻ってきて、肉体をさらに痛めつける。
そう、コート上でのレブロンはいつも強敵に囲まれている。だが彼にはもっと大きな敵がいる。時間だ。時間との戦いは私たちが誰でもいつかは直面する戦いであり、最終的には誰も勝てる見込みのない戦いだ。
それでもレブロンは潔く、決然として戦いに挑む。そんな彼を私たちは応援せざるを得ない。彼は「中年」になることを拒む。34歳で体重122キロの男があれだけ機敏に動き回り、スタミナもスタイルも衰えないのを見れば、こちらも元気になる。
昨年のゴールデンステート・ウォリアーズとのプレーオフシリーズで、レブロンは足首をひどくひねったが、それでも33ポイント、10リバウンド、11アシストのトリプルダブルを決めた。これこそ日々の鍛錬の成果だ。しかも結果を出すリーダーは、従う者を勝利に導くだけではない。それぞれが自分の才能を高めることを助け、全員のレベルを押し上げる。
「リーダーシップは1日や2日、あるいは2カ月だけの話ではない。常に問われるものだ」と彼は言う。「チームスポーツに参加して、自分の成功の過程を振り返れば、成功は自分だけで勝ち取るものではないことが見えてくる。成功し続けるためにはチームの全員が大切であり、みんながコミットする必要がある」
政治にモノ申すアスリート
野心があり、ライバル意識の強い選手たちを率いるのは大変だ。私もかつてレイカーズで主将を張ったから分かる。選手とリーダーの役割のバランスを取ることはとても難しかった。成功するかどうかは、選手としてだけではなく、戦略家としてチームメイトに信頼されるかどうかに懸かっている。
だがアスリートとしての成功だけでは十分ではない。時代のヒーローとたたえられる人物には、その時代の柱となるような価値観を体現し、その価値観を広めていく責任がある。