中国経済6.2%をどう見るか:中国側の見解
Q:まあ、これは驚きました。まさか、中国政府で仕事をしておられた方から、こんなお話をお聞きすることができるとは!
A:いや、まだありますよ。たとえばIPO改革。これだって、改革すると言ってから何年になりますか。中国の株式市場は「傷心の地」と言っても過言ではありません。
(IPOとはInitial Public Offeringの頭文字を取ったもので、未上場企業が新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得させることを指す。中国では2013年にIPO改革が提唱されたが、遅々として進んでいない。)
Q:ということは、6.2%の成長は、たしかに容易なことではないと言えるかもしれませんが、中国経済の内部構造にも問題があるということになりますね?
A:その通りですよ。6.2%は悪い数値ではない。ただその内容、成長の質の問題です。これを改善しないと、中国の経済はやがて好ましくない方向に行く可能性があります。
以上が、意外にも中国政府元高官から引きだした「中国批判」である。
思わぬ収穫だったと言えよう。
中国の若者は?
最後に北京にいる若者たちに「最近の景気をどう思っているか」を聞いてみた。若者と言っても、すでに就職している30歳代の人たちだ。
「あまり良くない」、「良くない」、「実力のない者が負け、実力のある者のみ生き残れる」、「リストラされた」などの反応があった。
さらに、以下のような具体例を挙げる者もいた。
1.不動産税法を制定する可能性が大きい。
2.企業税と社会保険の金額が下がるだろうと思う。企業の負担を減らす政策が増えるだろう。
3.不動産の値上がりにより、国民が消費に使える金額はすべて不動産の購入とローンの返済に消えたから、消費はなくなっている。
4.不動産価格が頭打ちになって、不動産の投資価値がなくなりつつある。インターネットはBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)などの大手に独占されて、新しい投資の方向を模索している。
5.失業率は既に上昇している。不動産の高騰、教育コストの高騰、経済情勢の悪化などにより、今の90后(1990年以降に生まれた人たち。ジュー・リン・ホウ)は子供を生みたくないし、人口出生率が暴落しています。
若者はなかなか考えているではないか。感想として、実にリアリティがある。
(なお、このコラムは中国問題グローバル研究所のウェブサイトからの転載である。)
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。