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中国経済

中国経済6.2%をどう見るか:中国側の見解

2019年7月17日(水)18時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

日本ではNHKなどが、今般の発表では「個人消費の成長が少なかったことが特徴で、中国政府も予想していなかったのではないか」といった主旨の解説をしているが、これは実態と乖離しているように思われる。

中国問題グローバル研究所の孫啓明教授の見解

中国問題グローバル研究所の研究員である孫啓明・北京郵電大学教授(このページの3番目で紹介)は、国家統計局の今般の発表を受けて、以下のような見解を述べている。

1.国家統計局の記者発表の中で、最も印象的だったのは「中国経済が6.2%という値を維持したのは、容易なことではない(来之不易)」と表現したことだ。

2.たしかにこの値に対して中央(政府)は大きな圧力を感じているだろうが、しかし、何といっても消費あるいは第三産業の伸びが大きかったことが重要だ。これは中央が就職と消費を促進した結果だ。

3.中国のような経済規模が大きな国家が、ここまで規模が大きくなってもなお6.2%の成長率を保っているというのは、誠に「来之不易」なのである。

4.前年を通して、6.5%を下回らないようにするために、中央はおそらく金融緩和の政策を打ち出して一定の投資成長を保つ環境を作り出すだろう。今年下半期では実体工業に対する負担を軽減するために、さらなる減税政策を打ち出し、商業経営環境の改善を図るだろう。

中国政府元高官(長老)の見解:意外な中国批判が

中国政府元高官(長老)にも見解を聞いてみた。

すると、かなり厳しい意見が出てきた。以下Q&Aの形で取材した結果をご紹介する(Q:遠藤、A:中国政府元高官)。

Q:今般の結果を、どう思いますか?

A:非常に複雑な事情が交錯していますからね......。必ずしも米中貿易戦の結果ばかりではない。

Q:と言いますと?

A:中国自身の問題だってある。

Q:中国自身の問題というのは、いろいろあると思いますが、主たるものは何だとお考えですか?

A:そうですねぇ......。ま、やはり、中国経済の成長は、あまりに政府に依存しすぎている。それから不動産にも依存しすぎていて危険だし、そして何よりも、融資の密集型成長に依存していることが良くない。

Q:融資の密集型成長?

A:つまり、国有企業と民間企業に対する格差があり過ぎるということですね。

Q:やはりねぇ。国進民退(国有企業が前面に出て、民間企業が一歩下がっていること)は、まだ改善されませんかねぇ......。

A:ええ、まだまだです。2016年データですが、国有企業に対する融資は78%であるのに対して、民間企業へは、わずか17%しか融資していない。

Q:それじゃあ、トランプが中国を非難するのも、一理あるってことになりますよね。

A:そうなんです。トランプの批判を受けて、中国は改善した方が国益に適う側面だって、ないわけではありません。

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