最新記事

移民

トランプの移民摘発でアメリカ人青年まで収容所送り、環境劣悪で体重12キロ減

Ocasio-Cortez Asks How Americans Would Feel 'Trapped In Border Camp'

2019年7月26日(金)13時49分
シャンタル・ダシルバ

成人男性向けの部屋は座れないほどの過密さで不潔さ(テキサス州マクレーンの不法移民収容施設) Veronica G. Cardenas-REUTERS

<劣悪な環境で批判を浴びている不法移民の収容施設に若いアメリカ人兄弟が収容され、それぞれ悲惨な体験をした>

アメリカ人であるにも関わらず、米移民当局の収容施設に3週間以上収容されていた若者が、7月25日に釈放された。

フランシスコ・アーウィン・ガリシア(18)と、彼の釈放を求めて奔走してきた家族は、涙ながらの再会を果たした。

テキサス州ダラス出まれのフランシスコが、弟のマーロン(17)とともに米税関・国境取締局(CBP)の検問所で止められ、身柄を拘束されていたことが明らかになると、全米に衝撃が走った。民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員がCBPを厳しく非難した。「CBPはアメリカ市民の身柄を拘束している」「国境地帯の移民収容施設は、不衛生でひどい悪臭がするため、監視員たちがマスクをしているような場所だというのに」

悪臭がひどいだけではない。フランシスコがダラス・モーニング・ニューズ紙に語ったところによると、拘束されている間に彼の体重は12キロ近く減った。十分な食べ物が与えられなかったからだ。シャワーを浴びることも歯を磨くことも許されず、身体は汚れ肌は乾燥した。

不法移民収容施設に3週間拘束されたアメリカ人、フランシスコ・アーウィン・ガリシア(右は彼の弁護士)

弟は出国同意の書類に署名で釈放

ドナルド・トランプ政権は7月22日、移民当局の権限を大幅に拡大すると発表した。新たな制度では、当局は移民裁判所による審査の手続きを経ずに不法移民を強制送還することができるようになる。

<参考記事>1カ月シャワーなし飲み水はトイレから 人権蹂躙するトランプ移民政策の実態

人権団体は、この制度によって多くの人がガリシア兄弟のような目に遭うことになりかねないと警告している。

<参考記事>不法移民の子どもは薬漬けで大人しくさせられていた?

母親がダラス・モーニング・ニューズに語ったところによれば、フランシスコとマーロンは、イギリスから来た複数の友人とサッカーのセレクションイベントに行く途中でCBPの検問に引っ掛かった。拘束されるとは夢にも思っていなかった。

フランシスコは社会保障番号が付与されている人だけが持てるテキサス州のIDカードを持っていたが、マーロンは学生証しか持っておらず、2人は身柄を拘束された。マーロンは、出国同意書に署名した2日後に釈放されたが、その代償として彼は出国し、今はメキシコの祖母の家にいる。いつアメリカに再入国できるかわからない。「母と話がしたい一心で同意してしまった」と、彼は電話で取材に答えた。

フランシスコは、アメリカのパスポートを持っていないことを咎められ、「アメリカ人だと嘘をついた」と言われた。
身柄を拘束されてから3週間にわたり、電話の使用も禁じられていた。辛くて自分も出国同意者にサインしそうになった、とフランシスコは言う。

アメリカ人として扱われなかったフランシスコは、米政府を訴える考えだ。

(翻訳:森美歩)

20190730issue_cover200.jpg
※7月30日号(7月23日発売)は、「ファクトチェック文在寅」特集。日本が大嫌い? 学生運動上がりの頭でっかち? 日本に強硬な韓国世論が頼り? 日本と対峙して韓国経済を窮地に追い込むリベラル派大統領の知られざる経歴と思考回路に迫ります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中