最新記事

富裕税

米富裕層から大統領候補へ「私たちに課税して下さい」

Mega-Wealthy Americans Sign Open Letter Calling for 'Moderate Wealth Tax'

2019年6月25日(火)18時17分
ジェイソン・レモン

ハンガリーの反ソロス・ポスター。億万長者にして慈善家のソロスは難民・移民を支援して母国の政府に嫌われた「実績」の持ち主 Laszlo Balogh-REUTERS

<ジョージ・ソロスからウォルト・ディズニーの子孫までアメリカのメガ富裕層18人が、金持ちから税金をもっと取って格差是正に使って下さいと大統領候補に嘆願。潮目は変わるか?>

アメリカのスーパーリッチ18人が、最も裕福な1%の人間に対して「愛国的」富裕税を課すよう求めて署名した公開書簡が、インターネットで公開された。富裕層に「適度な」税金を課せば「アメリカの自由と民主主義」が強化できると書かれている。6月24日、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。

署名したのは、11の資産家一族を代表する個人18名。投資家で慈善家のジョージ・ソロス、アビゲイル・ディズニー(ウォルト・ディズニーの兄ロイ・オリバーの孫)、フェイスブック共同創業者クリス・ヒューズのほか、ハイアットホテルズ創業一家の相続者で、社会的課題を解決する「インパクト投資」を行うブルー・ヘイブン・イニシアチブ共同創業者のリーセル・プリツカー・シモンズと、その夫の資産家イアン・シモンズといった名前が並ぶ。

「富裕層にもっと多くの税金を課す『道徳的・倫理的・経済的』責任をアメリカは負っている。富裕税による税収は、気候変動との戦いや、経済成長や、よりよい医療、そして機会と強さと民主的自由を強化するために使える。富裕税の創設は、私たちの社会の利益にかなう」

資産家たちは書簡の冒頭で、「アメリカの0.1%の富裕層に課税」することを支持する、と宣言。自分たちも含まれている、と述べた。書簡は2020年アメリカ大統領選挙の立候補者全員に宛てられているが、民主党の候補者に名乗りを上げたマサチューセッツ州選出の上院議員エリザベス・ウォーレンが提案する富裕税に具体的に触れている。

ますます下層が貧しくなる

「立候補者のなかでウォーレン上院議員が提案した案によれば、国内の最富裕層のうちの7万5000世帯に富裕税を課すだけで、数百万世帯がアメリカンドリームを手にするチャンスに恵まれることになる」と、書簡は記す。

多くの共和党員と保守派の識者は、富裕層への増税を批判しており、富裕層への課税は経済に打撃を与えて成長を鈍化させると主張している。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)による最近の分析から、アメリカの下層半分が保有する資産は過去30年間で約9000億ドルも減少している一方、トップ1%の富裕層では21兆ドルも増えていることが明らかになった。

ウォーレンは、5000万ドルを超す資産を保有する個人や世帯に富裕税を課すことで、こうした格差を是正しようと提案する。ウォーレンの予測によれば、中程度の富裕税を課すことで、今後10年間で約2兆7500億ドルの税収が見込める。そのお金で医療や教育に補助金を出す。学生ローンの支払いを免除する案も含まれる。

多くのエコノミストがウォーレンの提案を支持している。だが、富裕税を導入すれば、アメリカの富裕層は資産を海外に移して隠すだけだ、という声も根強い。

(翻訳:ガリレオ)

20190702issue_cover200.jpg
※7月2日号(6月25日発売)は「残念なリベラルの処方箋」特集。日本でもアメリカでも「リベラル」はなぜ存在感を失うのか? 政権担当能力を示しきれない野党が復活する方法は? リベラル衰退の元凶に迫る。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中