最新記事

農業

自然災害に盗難・殺人 銀より高い「バニラ」その知られざる裏事情

2019年6月11日(火)16時05分

短期間で生産量を増やそうと、マコーミックはパプア州の農業コミュニティで研修を強化している。消費者が慣れ親しんだマダガスカル産に匹敵する品質のバニラを生産するために、マコーミックは、土壌や水の管理方法を一部変更した。

マコーミックは、2017年にマダガスカルにおけるバニラ収穫の約3割がサイクロン被害を受けた後、市場の復旧に尽力した非政府組織CAREと協力している。同組織は、マダガスカルのほかインドネシアで生産者向けの栽培や管理方法のほか、金融知識を教える研修を行う組織を設立。生産は、女性が担っていることも多い。

CAREは、インドネシアのほかウガンダやタンザニアなども代替生産地として提言したと、CARE農業市場システム部門の副ディレクターを務めるエリー・カガンジ氏は言う。

ベン&ジェリーズのウガンダでの取り組みが失敗に終わった理由は、政府が決めた収穫日の前に、主に中国のバイヤーが「村に大量の現金を持って現れた」からだ、と前出のピント氏は指摘する。

「ウガンダからは、全くバニラを得ることができなかった」と同氏は話した。

ベン&ジェリーズでは、バニラ価格の上昇分は価格に転嫁しておらず、コストを吸収することで競争力を維持することを選んだとしている。だが、他メーカーのバニラ含有製品は、コーヒー用甘味料やヨーグルトからエッセンスに至るまで、小売価格が上昇を続けている。

コンサルティング会社グローバルデータによると、マコーミック製の約60ミリリットルの瓶入りバニラエッセンスの価格は、5月30日時点で、米小売り大手ウォルマートのサイトで8ドル12セント。2015年5月時点の5ドル94セントから上昇しているという。

「バニラはこれまでずっと、店頭には必ずあるありふれた商品だった」と、グローバルデータを率いるニール・サンダース氏は言う。

「消費者は価格上昇に驚くだろうが、アマゾンからウォルマートまですべてが価格を引き上げている時に、何ができるだろうか」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

[シカゴ/アンタナナリボ(マダガスカル) 3日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中