ひと筋縄ではいかないトランプ大統領の弾劾 民主党ペロシ下院議長も指摘
米国大統領が弾劾されたとしても、即座に権力の座から引きずり下ろされるわけではない。写真は2月5日、トランプ大統領の一般教書演説を聞くペロシ下院議長(2019年 ロイター/Doug Mills)
米国大統領が弾劾されたとしても、即座に権力の座から引きずり下ろされるわけではない。米民主党のペロシ下院議長が5日発言したように、簡単に「バイ・バイ・バーディ」とはいかないようだ。
ペロシ下院議長は、共和党のトランプ大統領の弾劾手続きに着手するよう一部の民主党員から圧力を受けている。トランプ氏は先週、弾劾について「卑劣で非常に不快な言葉だ」とコメントしている。
ペロシ下院議長はこれまで、民主党内からの弾劾要求をはねのけており、報道陣ともこの件について話している。
「大半の人々が、弾劾イコール公職を退くことだと思っていることをご存知だろうか」とペロシ議長は記者団に質問を投げかけた。「弾劾されたら、それでおしまいだと思っている。それは間違いだ」
「人々が考えているような目的達成手段ではない、投票して弾劾するだけ、それでおしまい、バイ・バイ・バーディ。でも、そういう風にはいかない」と下院議長は語った。
合衆国憲法は、大統領を弾劾し罷免する権限を連邦議会に与えている。しかし歴史上、上院の弾劾裁判によって罷免された大統領はいない。
現在、下院は民主党が支配しているため、弾劾決議は可能だ。しかしそれが審議される上院は共和党が支配しており、弾劾が可決される可能性は低い。
では、弾劾手続きはどのように行われるのだろうか。
●何を理由に弾劾するのか
米国の建国者たちは大統領職を創設したが、その権力が乱用される恐れがあると考えた。よって、合衆国憲法には弾劾が重要な項目として含まれた。
建国者たちは下院に「弾劾の唯一の権限」を与え、上院に「すべての弾劾を審議する唯一の権限」を与えた。また、上院での弾劾裁判では最高裁長官が判事となる。
憲法によると大統領は、「反逆罪、収賄罪またはその他の重罪および非行」について弾劾される。重罪と非行が具体的に何を指すのかは明らかでない。過去の例を見ると、汚職や訴訟手続きの妨害といった不正行為は含まれる。
下院の民主党員は、ロシアの米大統領選介入疑惑を巡るモラー特別検察官の捜査をトランプ氏が妨害しようとした疑惑について調査している。
4月中旬に発表されたモラー特別検察官による編集済みの報告書には、大統領が複数回捜査妨害を試みたことが記されていた。報告書は、大統領が罪を犯したと結論付けることも、潔白を証明することもしなかった。
ペロシ下院議長は5日、「犯した罪について言うならば、大統領が司法を妨害したということは分かっている」と述べた。